【第7日:12月23日】
とうとうガラパゴス最後の朝がやってきました。こんな朝がずっと続けば良いのになと、叶わぬ夢を見ながら朝日を眺めてはシャッターを押します。ちょっと早すぎたかなと思いながらも7時にレストランへ行ってみると、既に用意はできておりWELCOMでした。
今日は朝食を食べたらすぐ空港へ行くのではなく、サンクリストバル島の THE NATURAL HISTORY MUSEUM を見学した後、いったんGE2に戻ってランチを食べてから空港へ行くことになると昨日のブリーフィングでは言っていました。ランディングはいつもより遅い9時半だったので、我々はランディングの前に、ガイドとクルーへのチップ袋をフロント横のボックスに入れました。金額は最低ラインの50ドルずつです。また、借りていたシュノーケリングのセットを返却し、GE2内の今日までの買い物の代金をフロントで精算しました。現金は昨日の買い物でほとんどなくなっていたので、ここはカードで支払うことにしました。明日マイアミへ向かう時にエクアドルの空港で支払う空港税は現金で支払わなくてはならないので、その分の現金は最低確保しておかなければなりません。ガラパゴスの後はオーランドへ寄る予定になっているのですが、旅の半ばにして既に現金やトラベラーズチェックが無くなってしまうとは思いもしませんでした。文章だと大したことなく感じるかもしれませんが、けっこうやばい状況です。それにしても恐るべきはカメグッズ。悲しいかなあの魔力には勝てません。
サンクリストバル島の近くに、ぽつんと海中からそびえ立つ大きな岩の固まりがあります。これがキッカーズロックという岩で、なかなか迫力があります。GE2はわざわざこの周りを1周してくれてからランディングのポイントへ向かいます。
時間になるととりあえずはサンクリストバルへランディングです。初日にGE2に乗船するためにボートに乗った場所へのドライランディングですが、その後は空港とは逆の方向へバスに乗って移動します。 THE NATURAL HISTORY MUSEUM へは5分くらいですぐに着きました。建物は新しく、できたばかりといった感じです。展示場の中もけっこういいデザインで、ダーウィン研究所がかわいそうになってしまいます。ただ、ここには動物が1頭もいないという点がポイント低いですね。
ひとしきり全体を見終えてみんなが出てくると、我々を乗せたバスはランディングポイントへ戻ります。そこで、1時間の自由時間となりました。サンクリストバル島の町はサンタクルズ島に比べると、この島に住んでいる人達のための店が多いようです。土産屋も少なく、お金のない我々にはちょうど良かったかもしれません。大きなカメの像のうえで写真を撮ったり、郵便局でガラパゴスゾウカメのスタンプを押させてもらったりしながらダラダラと散歩をしていると、砂浜にはアシカが集まっているのが見えてきました。これで最後だと思い、近寄って写真を撮ろうとすると、ここのアシカは他の島のアシカよりも警戒心が強いようで、海の方へ逃げて行ってしまいます。これが普通の反応なのかもしれませんが、ちょっと寂しい気持ちになりました。
時間になったので、ボートでGE2へ戻るとすぐにランチでした。フロントには既に我々5日間組のバックが運ばれてきています。食後は部屋にいても何なので、プールデッキに出て外の風にあたっていましたが、時間になってもなかなかボートが出発する気配がありません。フロントで確認してみると、どうやら飛行機が遅れているようです。サエタ航空はサービスは良いのですが、遅れがちなのが玉に瑕ですね。結局ボートが出たのは16時半でした。
飛び立つ飛行機の窓からガラパゴス諸島を眺めていた我々は、お金を貯めてまた来たいなと思っていました。その後はちょっと遅めのシエスタタイムです。
グアヤキルに着いた時にはもう18時で、市内観光の予定はすべてパーです。迎えに来てくれた現地旅行社のトリイさんの車で行きに泊まったのと同じコンチネンタルホテルへ移動します。トリイさんには行くときにゾウガメの絵が入っているエクアドルのお札と切手を集めておいてもらうようにお願いしていたのですが、現金がほとんど無い状態でどうしようかと思っていたら、代金は後で東京の旅行社に渡してくれてもいいし、現金が無いなら貸してくれるというのです。渡りに船というか地獄に仏というか、遠い異国の地で人の情に触れた気がしました。
ホテルに着くとすぐに食事に行くとのことなので、荷物を部屋に置いてすぐに車に戻りました。今日のディナーはカニです。行きにも聞かされていたのですが、我々は大のカニ好きなので、とても楽しみにしていました。市内観光ができなかったので、店へ向かう途中にある丘の上の展望台のようなところへ寄りました。ここからはグアヤキルの町が一望でき、下からはよく分からなかったのですが、結構大きな町だなと思いました。
連れてきてもらった店は観光客向けではなく現地の人がいくような店で、店の屋根には動きはしませんが大きな作り物のカニがのっています。中に入りテーブルにつくと、そこには既に透明なまな板のようなボードと木槌、それに前掛けが人数分用意されています。トリイさんは店員に何やらスペイン語で色々と頼み、我々には「今日は食べたいだけ食べて飲んで下さい。」とうれしいことを言ってくれます。すぐに茹でたカニが6パイ出てきました。このカニはマングローブガニといって、海水と淡水が入り交じっている地域に生えるマングローブの林に生息しているちょっと変わったカニで、大きさは毛ガニくらいですが、ハサミが大きいのが特長です。まずは、トリイさんから解体方法や足の中の肉の食べ方等を教えてもらいます。トリイさんに言わせると我々はけっこう器用で覚えが早いとのことでした。ハサミや足は木槌で叩いてから中の肉を取り出すのですが、このときにけっこう汁や破片が飛び散ったりします。来るときにトリイさんができるだけ汚いカッコをしてきて下さいねと言っていた意味が分かったような気がします。しかし、カニ好きの我々にとってはこんなことは何でもないことで、昨日までの上品はディナーとはうって変わった豪快な食事に満足していました。
最初のカニは薬草か香草のスープで茹でたような感じでとてもおいしかったのですが、次にトリイさんが頼んでくれたやつもニンニクがたっぷり入ったこってり味で病みつきです。その後は交互に注文し、けっきょく1人6パイくらい食べたでしょうか。途中、トリイさんは店員を呼んでまた何やら言っています。するとその店員はおもむろにギターを持ってきて、我々のテーブルのすぐ横で歌い始めました。いわゆる「流し」ですね。2〜3曲聞いた後トリイさんはチップを上げていましたが、日本円で20円くらいのもんだそうです。
最後はカニ飯でしめくくりました。トリイさんに今日の食事代はどれくらいなんですかと聞くと、「ここは現地人向けの店としてはけっこういい店だけど、ビールなどの飲み物を入れても3人で1500円くらいだよ」とのこと。おいしさにもビックリしましたが、値段の安さにもまたビックリしてしまいました。しかし、こちらの物価からすればそんなもんかも知れません。トリイさんの家でも女中さんを雇っているとのことですが、その月給がたったの3000円だそうです。このカニも市場で買えば最低単位が24パイで、その値段も200円から300円くらいだそうです。開発途上国はいいよとトリイさんは言っていましたが、私も真剣にエクアドルに移住しようかと考えてしまいました。でも治安は悪いですけどね。
とりとめもなく、今回の旅を思い起こして書き連ねてきましたが、ガラパゴス旅行記としてはこのへんで締めくくらせていただくことにします。私達の新婚旅行は、この後オーランドのウォルト・ディズニー・ワールドへと続くのですが、それはまた別の形でご紹介しようと思います。