【第6日:12月22日】

 早いもので、明日はもうガラパゴスを離れなければならず、今日が実質的にはガラパゴス最後の日です。夜も早く寝てしまうからかもしれませんが、朝は6時45分のアナウンスより早く目覚めるようになりました。朝食前の日課のように外に出て朝日をカメラに納めます。空気もおいしく、ここ数日間の間に何だかすごく健康になったような気がします。

 今日の午前中はラビダ島へのウェットランディングです。このラビダ島の浜は赤茶色の砂浜でこれまでのどの島の砂浜とも異色な感じです。ここでもアシカや海イグアナが我々を出迎えてくれます。イザベラ島の湖ほどではないですが、砂浜際の低木の向こうに湖があり、遠くにフラミンゴが見えます。この湖に近づくと生臭い臭いが立ちこめてきました。よく見ると湖のほとりには無数の魚の死体が打ち上げられており、これが悪臭を放っている原因であることが分かりました。鳥達にとってはごちそうのようで、見てる側からついばんでいる鳥も見られました。

湖のほとりをフラミンゴの方に向かって歩いていきましたが、フラミンゴは岸から遠く離れたところから動かず、だいぶ粘ったのですが間近に見ることはできませんでした。とても高そうな超望遠レンズを付けたカメラを持っている人がバシャバシャとシャッターを切っているのを見て、80mmまでしかない私は非常に羨ましく思ったものです。

 ランディングした砂浜に戻った後は自由時間です。この自由時間は貴重です。なんと言ってもこのガラパゴスで最後のシュノーケリングのチャンスなんですから。セット一式借りておいていままでほったらかしだった妻も、せっかくだからということで、おそるおそるチャレンジしてみることになりました。しかし、足がつかなくなるとうまく浮いていられないようなので、サムエルに無理を言ってボートに乗るときに必ず着用させられるあのライフジャケットを借りました。これで安心したのかその後は特に問題もなく海中の魚等を見ていました。すると、水族館でしか見たことのないおでこが出っ張ったあのナポレオンフィッシュを発見しました。他にも大きな魚がいたんですが、名前はよく分かりません。

 足ひれの使い方がうまくないせいかあまり早く移動できない妻の手を引っ張って岩場の方に進んでいくと、そこにはアシカが2頭戯れていました。絡み合っては海に潜り、また、岩場にあがってを繰り返していましたが、海の中では非常に動きが早く、我々の横をすり抜けていきます。アシカの足(ヒレ?)が私の体をかすっていったときには正直ちょっと怖かったです。しかし、野生のアシカと海の中で一緒に泳げるなんて、ガラパゴス以外では考えられないでしょう。妻も大興奮で、シュノーケリングに挑戦して良かったとしきりに言っておりました。

 みんな慣れてきたのか、特にシュノーケリングをしない人たちは早々にライフジャケットを着込み、荷物をまとめてボートが来るのを待っています。帰りのボートはチーム関係なしですので、早いもの順です。それとは反対に少しでも長く海で泳いでいたい人は最期のボートまで待っています。

 GE2に戻るとこれも慣習になっているランチ前のジャグジーです。今日は昨日までの純粋な開放感と感動の中に「今日で最後か・・・」という寂しさや悲しさといった感情が含まれていました。しかし、そんな暗い気持ちもガラパゴスの太陽は吹き飛ばしてくれるような感じです。そこで、ビールを飲み干しジャグジーからあがるとランチまでの間デッキチェアーで体を焼くことにしました。既に鼻の頭などはもう一皮むけ、体もけっこう黒く、首筋などはヒリヒリと痛いくらいです。ヒゲも日本を出てから一度も剃っていないので、かなりワイルドな風貌になってきています。自分で言うのもなんですが、私の場合身長も180cm以上あるし体もガッチリしているので、そんじょそこらの外人には負けません。

 ランチを食べていると外人の子供がゲームボーイをやっていました。よく見ると私が飛行機の中でやろうと思って持ってきたカラーゲームボーイのクリアパープルを持っているではないですか。もうアメリカでも発売されていたんですね。そこで、部屋に戻ってポケモンのカートリッジを貸してあげると説明書も無いのに適当に動かしては、オーとかワオとか言って喜んでいました。日本のカートリッジはアメリカのハードでも動くことが検証できて面白かったです。また、ピカチュウはアメリカの子供も知っていて、人気があること、ゼニガメはアメリカでは名前が違うことも分かりました。

 今日のシエスタはちょっと長く感じられました。というか、実際、次の島に着くのが遅れているようで、これは非常にショックなことです。なぜかというと、次の島はこのツアー最大の目的地であるダーウィン研究所があるサンタクルズ島だからです。

 そもそもガラパゴス諸島に来たのは、このサンタクルズ島のダーウィン研究所に保護されているというガラパゴスゾウガメのロンサムジョージに会うためなのです。一口にガラパゴスゾウガメと言っても大きく分けて、低いところの草を食べるのに適したドーム型の甲羅を持つ種と、高いところの木の葉やサボテン等を食べるのに適した鞍型の甲羅を持つ種とに分類できます。また、細かく分類するとガラパゴス諸島の島ごとに独自の進化を遂げた固有種は全部で15種におよびますが、船乗り達による乱獲により、フェルナンディナ島・フロレアナ島・サンタフェ島のゾウガメは既に絶滅してしまっています。

 そして1972年、絶滅したと思われていたピンタ島で鞍型のガラパゴスゾウガメが発見されました。ピンタ島の固有種としてたった1頭になってしまった彼はロンサムジョージと呼ばれるようになりました。その後ロンサムジョージは、最後のピンタ島固有種を保護する目的でサンタクルズ島のダーウィン研究所(1964年設立)に移され、今は種として似ている他の島の2頭の雌と同じ敷地に暮らしているのですが、推定年齢100歳という老齢のためかあまり興味を示さず、繁殖は難しいと言われています。

 そんな彼に早く会いたいと気持ちは焦るのに、なかなかランディングできずイライラしていましたが、約1時間遅れの16時にはランディングできることになりました。サンタクルズ島へはドライランディングです。ランディングポイントはプエルトアヨラというガラパゴスでも一番大きな町で、車も走っています。予備のフィルムやお土産を入れるための大きな袋も準備しダーウィン研究所に向かいます。しかし、船着き場近くの露天の土産屋で早速グッズ収集です。サムエルにもう行くぞと急かされ、ダーウィン研究所までバスで向かいます。

 途中の道には両側に土産屋がたくさん軒を連ねており、カメグッズコレクターにとっては垂涎のストリートです。ダーウィン研究所内には一般の車は入ることができないようで、入り口のところでバスから降ろされ、帰りは今来た道を各自歩いて帰るようにとサムエルから説明がありました。また、最終のボートは予定より1時間遅い19時にこの島を出ることになっているから遅れるなとも言っていました。これは我々にとって非常にラッキーでした。到着が遅れたときはどうしようかと思っていましたが、これでグッズの収集も何とかなりそうです。

 入り口からちょっと歩いていくと敷地内にもホテルがありました。ここにステイというのも良かったかもしれません。さらに行くと土産屋がありました。ダーウィン研究所のオリジナルグッズはこことさっきのホテルの入り口のショップでしか手に入らないようなので、とりあえずいくつかゲットしておきました。ゲットしたグッズのひとつである帽子は早速かぶることにしました。チームのメンバーは先に行ってしまっていましたが、すぐに追いつきました。

 そこには何頭もの大きなガラパゴスゾウガメが放し飼いにされており、間近で彼らを見ることができました。このエリアにはけっこう岩や階段等の凹凸があって彼らは大丈夫なのかなと思うのですが、そういう環境が自然に近くていいのかもしれません。また、そんななか妙に平らな8畳分くらいのスペースがあり、その中央に行ってみると、サムエルに「そこは彼らの食堂だから入ってはダメだ」と注意されてしまいました。どうやらここに餌が置かれるようです。このエリアでは妻と2人してかなり写真を撮りました。

 コースに沿って次に進むことになりました。ここから先はかなり広いとはいえブロックに囲まれた中のゾウカメを見ることになります。それぞれの島の亜種毎に分けられているようです。中には木の陰になってしまって見えないところもありました。

 そして我々はついにロンサムジョージのエリアにやってきました。囲いの中でゾウガメが動いています。チームのみんなも「ジョージ!ジョージ!」と声をかけますが、ちょっと小さいようです。するとサムエルがあれはジョージのお嫁さんであってジョージじゃないと説明しています。サムエルによると、ジョージは非常にシャイであまり人前には出てこないで、奥の方でじっとしていることが多いとのことでした。彼を目当てにここまで来たのに見ることができないなんてすごくショックでした。かなりそこにいましたが、出てくる気配がないので仕方なく次に進むことになりました。

 その先にはうちのGAIAよりちょっと大きい甲長20cm程度の小さなガラパゴスゾウガメ達が檻の中で飼育されていました。彼らの甲羅には番号がペンキで書かれていて一目で区別できるようになっていました。これがあんなに大きくなるのかと目を疑いたくなりますがこれはこれで非常にかわいくてその場に釘付けです。いくつかのオリに分けられていますが生まれて1〜2年は、檻の中にある箱の中に入れられその箱のうえにも網がかけてあってかなり厳重に保護されています。お土産にガラパゴスゾウガメの子供を持って帰ってきてくれという人もいて、隙あらばと思っておりましたが、これではいくらなんでも無理ですね。昔はかなりオープンだったそうですが、お土産に子ガメを持って帰る観光客がけっこういたため、だんだんと厳しくなっていったとグアヤキルのトリイさんは言っていました。

 最後は資料館のようなところで、甲羅の標本や島毎の甲羅の形状の違いをまとめたパネルなどが展示されていました。こうして一回りしてみると、思っていたのに比べてダーウィン研究所ってけっこうせこいなぁと感じました。実際我々が見ることができるところの他に色々とあるのでしょうが、もっと立派でもっとカメもたくさんいて土産売場ももっと広くて色々あると思っていたのですが、ちょっと期待しすぎていたようです。

 この資料館を最後に自由行動ということになりました。そこで我々は今来た道を逆に走り、もう1度ジョージのエリアに戻りました。すると、そこには他のチームが集まっており、ガイドの説明を聞いています。そしてガイドが何やら奥の方を指差しています。その指差す方向を鞄から取り出した単眼鏡で見てみると甲羅のお尻の方が見えました。ガイドはあれがジョージだと言っているようです。ちょっと遠くて実際の大きさもよく分かりませんがガイドがそういうならそうなんだろうと思うことにしました。とにかく、念願のロンサムジョージを一部とはいえこの目で見ることができて、なんか肩の荷が下りたような気がしました。

 その後はさっきと逆の順路で土産屋までもどり、買い逃したものをゲットし、ホテルのショップに向かいます。行きに通った道と違う道を通ってしまいちょっと迷いましたが何とかたどり着きここではTシャツなどの服を中心に買いあさります。

 国立公園を出ると船着き場までは土産屋の連続です。ショップに入ると右も左もカメカメカメで、もうカメグッズコレクターは気が狂いそうになります。値段的にはTシャツが米ドルで12ドルくらいするので、決して安くはありません。こちらの物価を考えるとそうとうなボッタクリとも言えるでしょう。しかし、カルテルを結んでいるのかどの店もほとんど同じ価格でした。

 ここでは現地通貨スークレの他に、米ドルやトラベラーズチケットも使えます。マイアミのワタセさんはカードも使えるようなことを言っていましたが、ちょっと怖いのでカードはやめておきました。2〜3軒見たところでもう結構時間が迫っており、私が選んでは妻が支払い、妻が支払っている間に私は次のショップに走り物色するといったRUN&BUYの連係プレーで、プエルトアヨラのおおかたのSHOPはチェックしました。また、今回は大きめのものはパスせざるを得ませんでしたが、そのいくつかは写真に収めることで我慢しました。

 しかし途中からはそんな時間もなくなりとにかく最終のボートに間に合うよう重いグッズを抱えながら船着き場まで走りました。船着き場近くの最後のショップではサムエルもまだ買い物していたので、これでおいていかれることはない、とホッとすると同時にまたグッズを買っていました。サムエルと一緒にボートに到着すると、やはり我々が最後だったようで、空いている席に腰を下ろすとすぐに動き出しました。

 スケジュールが遅れているので、GE2に戻るとすぐにディナーという感じでした。ただ、今日は最後のディナーなので、ちゃんとシャワーを浴びてから妻はまた浴衣を着てレストランに向かいました。初日のディナーの時も着たのですが、やはり外人には受けが良いようで本人は上機嫌でした。私も持ってくれば良かったです。

 ディナーの後はメインラウンジでブリーフィングです。我々はいよいよ明日下船する5日間のツアーですが、ツアーによっては8日間というものもあり、その人達とは明日の予定が異なります。5日間組には、ガイド用とクルー用のチップ袋が渡され、最低50ドルずつは入れて明日フロント横のボックスに入れるよう説明がありました。また、カバンには行き先のシールを貼っておくようにとシールも渡されました。その後、証明書のようなものがキャプテンから1人ずつ手渡されます。我々はそれぞれ GREAT FRIGATEBIRD(軍艦鳥)・MAGNIFICENT FRIGATEBIRD ということで海の王様ネプチューンに証明されました。どうせなら GREAT GIANT TORTOISE とかにしてくれれば良かったのになとも思いました。

 部屋に戻ると明日の下船に備えてグッズの梱包作業が待っていました。今日はまだ眠れそうにありません。



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