【第5日:12月21日】

 今日は起床のアナウンスの前に起きました。生活のリズムが朝方になってきているのでしょうか。朝飯前に朝日を見ようと今日もまたデッキに足を運びます。先客が数名いましたが、軽く挨拶をしながら写真を撮ります。朝食は早くいった方が空いているので、そうそうに退却し、妻を連れて早速レストランに行くことにします。ボーイは我々のことを覚えていて、昨日の席に案内します。バイキングとはいえ、毎日ちょっと違うメニューです。ヨーグルトとパンケーキがとてもおいしいです。

 今日の午前中はイザベラ島のタグスコープです。この入り江は非常に波が静かで湖のようです。そのため、昔の捕鯨船は海が荒れるとここで停泊していたとのことです。岸壁には暇を持て余した船員達によって書かれた文字がかなり高いところまでビッシリです。そんな岸壁を眺めながらボートはランディングポイントを目指します。朝一はドライランディングで、また山登りのようです。

 ランディングポイントは非常に狭く、その先の岸壁沿いの通路は数10cmしかありません。10mほど行くとちょっと落ち着けるところに付きました。ここでライフジャケットを脱ぎ、ガイドに渡します。この岩場にもアシカはいました。アシカも今となっては特別なものではなく、そこにいるのが当然という感覚になってきています。とはいえかわいいものはかわいいので写真を撮ってしまいます。我々がやってきたため、彼らは奥地へ行ってしまいましたが、後には糞尿の臭いが漂っていました。そこでサムエルが説明をはじめます。

 やっぱり山登りでした。今回の山は緑が茂り、人口の階段も最初の急な部分だけです。ここでもやはり動物は見ることができません。山を登っていくと、我々がランディングした地点のすぐ裏に湖が見えてきました。隕石が落ちてそこに水が貯まったような感じです。途中途中でサムエルが草木等の説明をしている間に写真を撮りましたが、頂上と思われる地点からの風景が一番良かったです。ひとしきり堪能すると下山です。

 時間はまだ早いです。今日はこれから、GE2に戻る前に岸壁に沿ってボートで走らせます。最初に目に入ってきたのはアオアシカツオドリですが、写真で見たように本当に足が水色です。巣もあるようです。動物を見つけるとボートはスピードを落とし、岸に寄ってくれます。場合によってはボートを止めて写真を撮る時間を十分くれます。こちらにお尻を向けていた1羽が白いフンをしました。岸壁の白い部分はこれらのフンの積み重ねということだったんですね。次に見えてきたのは昨日のバルトロメ島でもちょっと見ることができたガラパゴスペンギンです。今日はちょこちょこ歩いたりしていてかわいさ20%アップといったところでしょうか。当然アシカや海イグアナもいますが、この辺りにいるのは群ではなく、群からはぐれて数匹がちょっとずついるといった感じです。

 サムエルに言われて見上げてみると絶壁の上に山羊がいます。あれはガラパゴスヤギといって・・・というのはウソで、人間がこのガラパゴス諸島に住むようになってから持ち込んだ家畜の山羊が逃げて野生化してしまったものです。今では1万頭以上に繁殖してしまっているそうです。この問題は非常に大きな問題で、本来ゾウガメ達が食べるべき葉や草を山羊が食べてしまうことによってゾウガメ達が餓死してしまうということもあるのだそうです。16世紀以降、山羊に限らず豚や植物等もそうですが、本来ガラパゴス諸島にない種を人間が持ち込むことによって、それぞれの島にあった進化を遂げてきた動植物の生態系に大きな打撃を与えているというのです。島の何かを傷つけたり持ち帰ったりするのも自然破壊ですが、ここでは何かを持ち込まれることによって起こる自然破壊についても非常に神経を尖らせています。

 今度は海の中です。大きなウミガメが水面近くを泳いでいます。おおー、カメだカメだ!ボートが近づくと下に潜ってしまうようですが、ところどころで2〜3頭見ることができました。ボートを走らせていると大きなアシカがボート横をすり抜けていきました。ボートで追いかけると、「しつこいぞ!」と言わんばかりに大きな水しぶきを浴びせかけられ、みんなカメラを守るのに大変でした。こんな感じで岸壁沿いを往復しGE2に一度戻りました。

 GE2に戻るやいなや、私はシュノーケリングの準備をしてすぐさまボートに戻りました。今日の午前中は盛りだくさんで、これから希望者だけシュノーケリングに行くのです。今回はボートの上から足の着かない海に直接入りますので自信のない人は船で休憩です。ということで妻もGE2から私をお見送りです。

 さっき見学した岸壁とは反対の方向にボートは進み、岸壁に近いポイントで海に飛び込みます。今回は各自自由にシュノーケリングというよりは、岸壁沿いの決まったコースをみんなで泳いでいくという感じです。その先で今乗ってきたボートが待っていてくれるという形になっています。しかし、今日の海は昨日に比べすごく冷たく感じられます。

 それでも海の生物の美しさに導かれながら、チームのメンバーを追います。実際には希望者だけということで、チーム毎ではないのですが、ドルフィンチームのメンバーはアグレッシブな人が多く、こういう時にはなぜか最初のボートに固まってしまうようです。初日のディナーで一緒に招待されたオランダ人夫婦もドルフィンチームだったのですが、実は4人の子供がいて一番下の子は産まれたばかりの9カ月だというから驚きです。そんな子供を国に残してこんな所でシュノーケリングしているんですから・・・外人は違いますね。

 それはともかく、海の生物を眺めながら進みましたが、もしかしたらと思って期待していたウミガメとのランデブーは実現しませんでした。運が良ければそういうことも十分あり得たポイントだっただけに残念です。

 GE2に戻ると私はすぐにジャグジーです。その横のテーブルでは妻が船内のショップで買ったばかりの絵はがきに何やら書いています。そんな光景も視界の一部に納めながらやはりビールです。うーん、これこれ!!とか言いながらジャグジーの周りを見ると、顔より大きいエビが2匹うごめいていました。シュノーケリングの時にだれか持ってきたのかなとか思いながら手にとって色々見てみましたが、日本のエビとはだいぶ違う感じです。近くにいた子供の顔の前に持っていくと怖がって後ずさっていました。

 プールデッキでのランチが済むと例によってシエスタタイムです。実際やってみると、このシエスタは本当にいいシステムだと思えます。このハードなスケジュールについていけるのもシエスタあってのこととも言えます。我々はこのシステムが非常に肌にあったため、オーランドに行っても続けていました。(日本に帰ってきてからもお正月の間は続けていました。)

 シエスタタイムも終わり午後のランディングです。今回はフェルナンディナ島のエスピノサ岬へドライランディングです。フェルナンディナ島近辺はものすごい波でした。ボートで進むラインにもけっこうな波がやってきて、気分はアドベンチャーです。そんな波間をくぐり抜け、ボートは波の穏やかなマングローブの入り江に入りました。ランディングする前の岩場でクロアジサシやガラパゴスコバネウ、泳いでいるガラパゴスペンギンも見ることができました。ガラパゴスコバネウは追われる敵がいないため飛ぶ必要が無くなり羽が退化してしまったウの仲間です。

 我々は無事ドライランディングし、マングローブ林の中の小道を進んでいると、その道を埋め尽くすような海イグアナの集団に出くわしました。海イグアナ達の皮膚は一見すると地面の溶岩のようでした。そんな海イグアナたちを踏まないように注意しながら進むのですが、顔の前に足を出してしまうといくらおとなしい彼らでも鼻から潮を噴いて威嚇してきます。

 林を抜けると、一面を溶岩に覆われた場所に出ます。ガラパゴスは島によって、また同じ島でも場所によって色々な顔を見せてくれます。溶岩の大地は触ってみると温かく感じました。サムエルは溶岩の説明をしています。ここではちょっとショッキングなものを発見してしまいました。それは、海イグアナの死骸です。日光浴の格好のまま白骨化してしまっています。97年の大型のエルニーニョとその反動とも言われるラニーニャによって、彼らの生活環境は大きく揺さぶられたと聞いていましたが、その結果がこれなのかと思うと悲しい気持ちになりました。エルニーニョが発生すると、海水温が上昇し、海草や海中の生物が死滅するため、それらを主食とする動物達は非常に大きな影響を受けることになります。特に1982年〜1983年のエルニーニョは強力で、ガラパゴスペンギンの73%とウミイグアナの70%が死亡したと言われています。

 しかし、海辺の方へ行くとそんな気持ちも吹き飛ばすほどの数の海イグアナがあちこちで体を寄せ合っていました。小さな子供も見つけることができました。ちょっと安心するとともに写真を山ほど撮りました。ウミイグアナは3000種類以上いるトカゲの中で唯一、肺呼吸でありながら身体機能を水中での活動に適応させたトカゲです。水中にいるときは心拍数を低くすることにより長時間の潜水が可能となります。

 先に進むとカニがワラワラと岩の間で蠢いています。よく見ると、このカニは前にも進んでいます。さらに驚くことに岩と岩の間をピョーンとジャンプして渡っていきます。カニが飛ぶのははじめてみました。

 雨こそ降りませんでしたが、空は曇っていて風が吹くとちょっと肌寒い感じがしました。ガラパゴスへ来て初めてのことです。まぁ、首筋が焼けなくて良かったかもしれません。その後は砂浜で昼寝をしているアシカ達を横目で眺めながら海岸線をだらだらと歩き、ボートへ戻りました。

 妻はかなり寒かったようで、GE2に戻ると早速部屋で熱いシャワーを浴びていました。私はバーでドリンクをもらってから部屋に戻り、妻の後にシャワーを浴びました。今日はディナー前に明日のブリーフィングがあるということで、けっこう急いで支度をしました。今日のディナーのメインは昼間ジャグジーのところにいたのと同じエビでした。これが味付けも良くてとてもおいしかったです。毎日ごちそうで運動しなかったら太りまくってしまいそうです。

 デザートも終わり部屋に帰ろうとするとボーイがもう少しそのまま待っているようにと言うのです。言うとおりにしているとクルーが海賊の格好をしてレストランに乱入してきました。乗客2名も王様・女王様のような格好をして何か叫んでいます。王様の指示に従って海賊の格好をしたクルーはテーブルの乗客を前に連れてきて、ペンギンやアシカ等のまねをさせています。外人はノリが良くて連れ出された人もオーバーなアクションで期待に応え大盛り上がりです。朝から晩までクルーも大変だな、とは思いながらも、素直に楽しめました。

 その後はメインラウンジに移ってダンスタイムということでしたが、こちらはちょっと遠慮させてもらって夜空を眺めることにしました。天気が気になっていましたが、外に出てみると昨日と同じように星空が満天に広がっていました。妻も感激したようで星座板を持ってくれば良かったねとか言いながら2人でしばらく眺めていました。



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