【第3日:12月19日】

 朝食をホテルのレストランで済ませて荷造りをしているとトリイさんが迎えに来てくれました。空港に行く前に、我々の部屋からも見えていたホテルの真ん前にある公園を見学することにしました。ここは別名「イグアナ公園」と言われるように、公園内の木の上にイグアナがワラワラしています。日本では公園と言えばハトかスズメと相場が決まっていますが、所変われば・・・といったところでしょうか。

 ガラパゴス諸島の生物の起源についてはまだまだ謎が多いのですが、一説に寄ればここのイグアナがガラパゴス諸島のイグアナのルーツではないかとも言われているそうです。ひとしきり写真を撮り終えた我々は、いよいよガラパゴスへ向けてのフライトに胸弾ませながらグアヤキルの空港に向かいました。

 ここでも飛行機はサエタ航空です。トリイさんに荷物を預けてもらって、出発までの間にガラパゴス諸島の説明を受けました。主なものは以下のようなことです。

・グアヤキルとガラパゴス諸島は約1000km離れており、時差も1時間あるが、船の中はガラパゴス時間ではなく本土の時間で生活している。
・各島に上陸する場合には10人程度のチームに別れ、ボートにより上陸するが、各チーム毎に資格を持ったガイドが同行して、旅行者に説明しながら行動を監視している。
・チップは都度支払う必要はなく、クルーに最低50ドル、ガイドに最低50ドルを最後にまとめて専用の袋に入れて渡す。
・船内ではサインですべてが済み、最後の支払もカードでOK。
・船室の冷蔵庫の飲み物は有料だか、バー等で飲む分にはすべて無料。
・毎朝ミネラルウォーターが2本船室に用意される。無くなっていれば午後にはまた補充してくれる。
他にも色々言っていたような気もしますが忘れました。最後に、向こうの空港に着いた時、迎えに来ている船のクルーが我々を識別できるようにと、胸にシールを貼ってくれました。

 トリイさんと別れて飛行機に乗り込むと、1.5時間程度でガラパゴス諸島に到着しました。ガラパゴス諸島にはいくつか空港のある島があるらしいのですが、我々はサンクリストバル島の飛行場に降り立ちました。AIRPORTと呼ぶにはおこがましいようなこじんまりとした小さな空港です。ここではガラパゴス国立公園税として1人100ドルを支払わなくてはなりません。ここはカードやトラベラーズチケットは使えませんので、現金を用意しておきましょう。

 税金を支払うとガラパゴスエクスプローラーII号(以下GE2)のクルーらしき人が我々の胸のシールを見て寄ってきました。我々の名前を告げるとリストをチェックしたうえで、マイクロバスに誘導してくれました。席がいっぱいになると港に向けて出発しました。港までは5分程度で、そこからはボートでGE2へ乗船することとなります。我々の旅行鞄はそれぞれ30kg以上あってこの乗船方法は非常に心配だったのですが、荷物は飛行機から直接GE2まで運ばれるのでまったく問題ありませんでした。

 乗船すると、クルーが笑顔で迎えてくれました。中はホテルのようにきれいで、エレベータも付いているし、これからの航海への不安はだいぶ和らぎました。まず最初にメインラウンジで乗船手続きをする必要がありましたが、名前や住所程度の簡単なもので、おもしろいのは食事の種類を選べることでした。ベジタリアンやライトなものを選択することができたり、牛・豚・鶏肉は大丈夫かといったものがありました。

 それらが済むと早速ランチです。飛行機の中でもサンドイッチを食べたのであまりお腹は空いていなかったのですがバイキング方式だったので、好きなものだけ選んで食べることにしました。

 食後に部屋へ戻るとカバンがデンと置かれていました。あまりに重いので、途中で海に落とされていやしないかとちょっと気になっていましたので一安心です。妻はちょっと船酔いしたようなので、少し休んでいました。

 しばらくするとメインラウンジに集まれというアナウンスがあり、乗客がすべてメインラウンジに集まりました。そこで、船の上での注意事項やスケジュールなどの説明があり、最後にチーム分けが行われました。チームは予め6つに決められており、Aはアルバトロス、Bはブービーと言った具合に動物の名前がつけられています。私はDのドルフィンチームでした。説明は最初英語とスペイン語で行われていましたが、途中で確認したところスペイン語しか分からないという人がいなかったので、以後はすべて英語での説明となりました。書いてあるものならまだしも人が話しているのを聞き取るのは一苦労で、時間や重要な単語を聞き取るのが精一杯でした。

 今日は初日だし、このままディナーまでゆっくりするのかと思いきや、飛行機で降り立ったサンクリストバル島の別のポイントに船を進めて上陸するらしいのです。しかもいきなりウェットランディングだそうです。

 ウェットランディングとは、GE2からボートに乗って島の目的ポイントまで行き、上陸する際にボートから海におりるため、膝くらいまで海水で濡れる可能性がある上陸方法のことです。主に砂浜からランディングする際に用いられる方法です。これに対しドライランディングは岩壁などの決まったポイントへの上陸方法で、この方法の場合、基本的に靴は濡れることはありません。また、GE2に乗り込む時もそうでしたが、ボートに乗るときには必ずライフジャケットを着用させられます。

 チーム毎にそれぞれボートに乗り込みます。波に揺られながら目的の砂浜に向かってボートは進みます。これだけでもなかなかなアトラクションです。そして、砂浜にボートを乗り上げ、乗客はみなボートの縁を乗り越えて海の中に降ります。海はフンボルト海流という寒流が流れ込んでいるせいか、赤道直下という地域にも関わらずけっこう冷たく感じられました。波が来ない砂浜まで来るとガイドがライフジャケットを回収します。そしてチーム毎にそれぞれのガイドがいろいろ説明し、我々が行動して良い範囲を示します。我々ドルフィンチームはサムエルというガイドが担当です。もし、我々が範囲を超えようとしたり、動物に危害を加えようとしたりするとサムエルに厳しく注意されます。

 ランディング地点から少し歩くと岩の上に体長10cmくらいの溶岩トカゲを見つけることができました。ガラパゴスに来て初めて間近に見る動物です。結構近くまで寄っても逃げないので、かなりアップの写真が撮れました。また、ちょっと進むと海辺の岩々に茹でたわけでもないのに真っ赤な色をしたカニがたくさんへばりついていました。このカニは脱皮を繰り返す度に赤さを増していくということで、確かに小さなカニは黒っぽい色をしていました。

 その先の砂浜にはアシカの群が固まって昼寝をしていました。すぐに近づいて写真を撮りたかったのですが、ちょっと手前でサムエルがチームのみんなを集めてあれがボスで群を護っているとか色々説明を始めました。そのちょっと長い説明が終わると後は自由時間になり、時間になるまで好きなことをして過ごすことができます。そこで、早速アシカ達に近寄ってみたのですが、のほほんと寝ています。触れるくらいに近づくとさすがにボスが吠えるのですが、本気で襲いかかって来るというようなこともなく、なかなか良い写真が撮れました。彼らは人間に慣れているというよりは人間を無視しているという表現の方が正しいような気がします。水着になって泳いだり、シュノーケリングをしたりしている人もいましたが、船内での説明をよく聞いていなかった我々はそういった準備をしていなかったので、長い砂浜を端の方まで散歩したり、アシカの近くに座って夕日を眺めたりしてのんびりとガラパゴスの自然を味わいました。妻の船酔いもいつの間にか直っていました。

 時間になったのでGE2に戻ると、我々の船室にワインが用意されており、その横にGE2のキャプテンからディナーへの招待状が添えられていました。シャワーを浴びて服を着替え、そのワインを飲みながら時間が来るのを待ちました。

 今日は初日ということもあり、ディナーの前にメインラウンジでクルーの紹介がありました。船医も紹介されていたので、紹介の後、妻のために念のため酔い止めの薬をもらいました。その後、レストランに向かいました。

ボーイにキャプテンからの招待状を見せるとキャプテンのテーブルに誘導してくれました。招待に対するお礼を述べ握手をかわした後、簡単に自己紹介をしました。我々夫婦の他にもオランダから来ている40歳位の夫婦が招待されていました。キャプテンからのお誘いということもあり、妻はわざわざ日本から持ってきた浴衣を着込んできたのですが、これが外人には非常に受けてなかなか良いコミュニケーションが取れました。招待されたと言っても食事の内容は他の人と違うわけではないのですが、1日に2組4人を招待するとしても4日では16人しか招待されないことを考えると、招待された我々は非常に光栄だったということでしょうか。

 食後はメインラウンジで明日ランディングする島々の説明(ブリーフィング)があるのですが、お酒も入りお腹いっぱいの我々は、スライド上映のため部屋が暗くなるとすぐに眠りこけてしまいました。部屋が明るくなって目が覚めるとブリーフィングは終わっていました。部屋に戻るとそのまま寝てしまいました。



Before    BACK    Next