【出発前:ガラパゴス旅行について】  友人から「新婚旅行はどこに行くの」と聞かれ、「ガラパゴス諸島だよ」と答えると「ああ、あのでっかいカメやイグアナとかがいるところか?」という具合にどんなところかはみんな分かるのですが、どこにあるのかとかどこの国なのかが分かった友人は1人もいませんでした。  ガラパゴス諸島と言えばダーウィン、ダーウィンと言えば進化論、進化論と言えばガラパゴスゾウガメのロンサムジョージ、というわけで今回最大の目的は、ビンタ島最後のガラパゴスゾウガメであるジョージ君に会うことでした。妻は動物は何でも好きなようで、カメ以外にもイグアナ等に興味を示していましたから行き先でもめることはありませんでした。もう一つの目的はリクガメにまつわるグッズの収集です。  まずはガラパゴス諸島の国と場所についてですが、国としては南米のエクアドル共和国(Republic of Ecuador)に属しています。「エクアドル」はスペイン語で「赤道」を意味しています。そして大陸から約1000kmほど西の太平洋上に位置する赤道直下の 19 の島々の総称がガラパゴス諸島です。というわけで、ガラパゴス諸島はとても遠いところにありますので、行くにはお金と時間がけっこうかかります。  ガラパゴス諸島は赤道直下にありながら、南極から流れてくる冷たいフンボルト海流という寒流の影響で、天気によってはかなり肌寒い日もあります。必ず、ウインドブレーカーやパーカー等も持っていきましょう。  ガラパゴスへの旅行となると扱っている旅行代理店も少なく、ルックJTB・近畿日本ツーリスト等でも扱っているようですが値段が高いため、私たちは世界ツーリスト(TEL 03-3562-3727)を選びました。  ガラパゴスはいくつもの島からなる諸島なので、船に寝泊まりするクルーズが通常のパターンのようです。島のホテルに宿泊するプランもあるようですが、その場合は毎日目的の島まで行ったり来たりに時間がかかってしまいます。その点船ならば寝ている間やランチを取っている間に移動してくれるので、無駄な時間がありません。  図の中にある数字は我々が辿った順番です。現地5日間のツアーではすべての島を回るというわけにはいきません。時間とお金に余裕のある方は現地8日間のツアーにすることをお勧めします。  船はサイズやグレードによって3種類ありました。大部分の人がアンバサダー号という船を選ぶそうですが、とにかく安くガラパゴスに行きたいという人は、船酔いが心配ですが一番小さなコリンチャン号という船を選ぶそうです。我々の場合は新婚旅行ということもあって、一番大きく船の内装等も豪華でサービスの良いと言われているガラパゴスエクスプローラーII号という船にすることにしました。  現金・クレジットカードの他に持っていくもので忘れてならないのは、渓流ガイド用ノンスリップ草履の(Teva)、日焼け止めローション、撮影用機材、といったところでしょうか。後はふつうの海外旅行に持っていくようなものを持っていけばいいでしょう。  渓流ガイド用ノンスリップ草履の(Teva)は、スニーカーではぐちゃぐちゃになり、草履では足場が困難で歩けないような場所や、ウェットランディングの際に役立ちます。日焼け止めローションは赤道直下の日差しですから必需品です。  撮影用機材として今回私が用意したのは CANON NEW EOS KISS というとっても軽い一眼レフです。これには28mm〜80mmの純正レンズを付け、36枚撮りのフィルムを20本も用意しました。デジタルカメラでは、Nikon COOLPIX900 を用意しました。デジカメではフィルムの代わりに32MBのコンパクトフラッシュメモリを1枚と、単三型ニッケル水素充電池を8本(2セット分)と充電器を用意しました。それに撮った画像の保存用として、SONY VAIO 505EX/64 を持っていきました。また、これら電化製品を使うために電圧変換器とアダプターを持っていきました。PC等の精密機械を動かすため、変圧器には電流の整流機能を持つものを用意しました。電圧器の口はふつう1つですから二股ソケットも忘れずに用意します。このデジカメの場合、32MBのメモリーには、FINEモードで640×480ドットの画像が約200枚撮れます。本当はデジタルビデオも持っていきたかったんですが、かさばるし、撮るのが大変だし、後であまり見ないし・・・ということで、今回はやむを得ず置いていくことにしました。  我々が行く前に日本で換金した際のレートは1ドル119円でした。また現地で使用されている通貨であるスクレへはドルからしか換金できないのですが、現地ではドルが使用できるので、特に換金する必要はありません。しかし、5,000 スクレのお札にはガラパゴスゾウガメの絵が描かれているので、必ず換金した方が良いでしょう。レートは、10,000 スクレで 1.56 ドル、日本円では 186 円でした。 【初日:12月17日】  12月17日、我々は妻の実家に預けたGAIAとピカソに別れを告げ、成田から18時40分発のアメリカンエアラインで出発しました。機内では「アルマゲドン」の日本語吹き替え版を見た後はほとんど寝ていました。飛行機はまずシアトルに降り立ちました。ここまで来るのに約8時間かかりました。到着した時間はシアトル時間で朝の10時、日本との時差は17時間ですから日本は夜中の3時なのでしょう。ということは夜中の2時頃に朝食を食べたということになります。今日の目的地はマイアミなのですが、燃料の関係からかマイアミまでの直通便はないようで、必ずどこかの空港で乗り換えて行かなければならないようです。というわけで、シアトルでアメリカへの入国審査を行うために、荷物は一度外に出てきてしまうので、またマイアミ行きの飛行機に預け直さなければならないのが面倒です。乗り換えの待ち時間にお土産屋さんで早速カメの置物を見つけ思わずゲットしてしまいました。  成田からシアトルまでもけっこうありましたが、シアトルからマイアミも約6時間かかりました。シアトルとの時差も3時間あり、アメリカという国の広大さを思い知らされました。この機内ではディズニーの「the PARENT TRAP」というまだ日本では公開されていないと思われる新作映画を上映していました。セリフは英語なので何を言っているのかはよく分かりませんでしたが内容はだいたい理解できました。長時間のフライトに備え、本やゲームボーイも持ってきていたのですが、何か眠たくてここでも食べるか寝るかの状態でした。  マイアミに着くと現地旅行社(SUNSHINE TRAVEL & TOURS,INC.:TEL 305-442-8802)の渡瀬正章さんが迎えに来てくれていて、ビーチサイドのホテルまで送ってくれてチェックインもしてくれました。ロビーには大きなクリスマスツリーと小鳥達の入った鳥かごが並んでいました。明日迎えに来てもらう時間を確認して渡瀬さんは帰りました。部屋はけっこう広くてベランダからはホテルのプールやマイアミの浜も見るなかなか良い部屋です。 時間もまだちょっと早いし小腹も減っていたので、我々はホテルの前にあったハンバーガーショップで遅いディナーを取ってから寝ることにしました。日付変更線を越えてきたのでまだ12月17日ですが、そういう意味も含めて今日はえらく長い一日でした。 【第2日:12月18日】  朝食はツアーの代金に含まれており、ホテルのレストランで食べました。食後はホテルのすぐ裏のビーチに出て海や鳥達の写真を撮ったりしていました。  当初の予定では「今日はゆっくりして15時くらいまでに空港に行けばいいや」と思っていたのですが、昨日、渡瀬さんが車の中で、マイアミにはエバーグレース国立公園というのがあって野生のワニをボート(ホバークラフト)に乗って見に行くことができるという話を聞き、オプショナルツアーとしてお願いすることにしていました。  早めのランチを同じレストランで済ませると、渡瀬さんが我々をホテルまで迎えにきてくれていました。早速車に乗り込みエバーグレースを目指したのですが、ホテルからは1時間ほどかかりました。  そこではまず、建物の中でワニの生態や身体的特徴等の説明(もちろん英語)がありました。ワニは大きく分けて人を襲うものとそうではないものに分けられるそうです。人を食べるワニはマンイーターといってクロコダイルがその仲間です。ここにいるワニ達は人を襲わないアリゲーターという種類のようで、比較的安全なワニのようです。しかし、ワニの脳味噌は非常に小さく、頭は良くないので人には慣れないそうです。また、ワニは目のついている位置の関係からか、真正面のものは見えないようで、説明していた人はワニの開いた口の中に真正面から手を入れていました。ぼーっとしてるワニなんじゃないかなとも思いましたが、今度は棒を突っ込み、その棒を口の一部にちょっと触れさせると、ものすごい勢いで口を閉じていました。説明が終わると、体長50cmくらいの子供のワニを抱かせてくれて写真を撮らせてくれました。妻は「かわいい〜!ひんやりしていて気持ちいい〜!」と大感激でした。  園内には飼育されているワニもかなりの数がいてビックリです。大きな池で自由に暮らしており、伊豆のバナナワニ園のワニはかわいそうだな〜と思いました。そんな光景を横目で見ながら、いよいよ、野生のワニを見るためボートに乗り込みます。ここのボートはスクリューの代わりに大きな扇風機みたいなものがボートの後ろに付いていてホバークラフトのような感じです。通常のスクリュータイプでは湿地帯の草がからみついてしまうためこのようなボートなのでしょう。しかし、これがえらく大きな音を立てるので、係員がトイレットペーパーを各人にくれます。これを丸めて耳に入れろということなのですが、我々は飛行機内で使うために持ってきたイヤーウィスパーがあったのでそれを使いました。  このボートは思ったより速く、湿地帯を駆け抜ける爽快感はこれだけでも十分なアトラクションだなとか思っていたせいか、なかなか野生のワニを見つけることができません。時間的な問題もあるのでしょうか。あちこちでスピードを落として周りを注意深く探したりするのですが、なかなかいません。ですが、ついに発見しました。日本風に言えば船頭さんがそのワニめがけて、なんと「マシュマロ」を投げました。鳥肉とかを与えると、興味を示しすぎて、襲われる可能性もあるそうなので、マシュマロあたりが良いらしいのですが、といってなぜマシュマロが・・・。ワニの他にもきれいな鳥が蓮の葉の上を歩いて寄ってきます。ワニも次第に寄ってきますがおとなしいもんで、船頭さんは頭を撫でたりしていました。乗客は写真を撮ろうとワニの方に寄るので、ボートがひっくり返るのではないかと心配になりました。  結局、ボートでは子ワニ1匹を含めて野生のワニを4匹を見ることができました。また、ここのお土産屋さんでもカメグッズをけっこう発見してしまい、数あるワニグッズを無視しながら買いあさってしまいました。そうこうしているうちに飛行機の時間が迫って来て、渡瀬さんに急かされながら飛行場へ向かいました。  今度はサエタ航空というエクアドルの飛行機でグアヤキルという都市に向かいました。エクアドルを含む南米の国々はほとんどスペイン語が公用語で、マイアミあたりでもスペイン語の表記が目立ちます。機内放送もスペイン語と英語です。当然日本語はありません。  機内での食事はパンとサラダしか出て来ないので、貧しい国だからディナーはこれだけなのかなとも思っていたのですが、後でメインが来ました。花も添えられていたりしてビックリです。食後の映画は「マスク・オブ・ゾロ」でした。  マイアミから約4時間でグアヤキルに着きました。時差はありません。エクアドルの首都はキトで、そこを経由するツアーもあるのですが、キトは非常に高いところにあるため、旅行者の約50%の人が高山病にかかってしまうそうです。そのため、最近のガラパゴスツアーではほとんどがグアヤキルを経由しているようです。スイス人ならいざしらず、目的地であるガラパゴスに行く前に具合が悪くなってしまっては元も子もないですから、グアヤキル経由はいいことだと思いました。  グアヤキルの空港は事件があったらしく軍隊によって包囲されていました。そのせいで現地の旅行社(JAPAN TOURS:TEL 04-399682/290236)のトリイさんも空港内の駐車場に車を止めることができずちょっと遅れて出迎えに来てくれました。ほんの数分待っただけなのですが、濃い顔で何を言ってるのか分からないエクアドル人に囲まれてちょっと怖い思いをしました。トリイさんに連れられて早速車に乗り込み、市内のホテルにチェックインしました。夜も遅いし、明日は早いので風呂に入ってすぐに寝てしまいました。 【第3日:12月19日】  朝食をホテルのレストランで済ませて荷造りをしているとトリイさんが迎えに来てくれました。空港に行く前に、我々の部屋からも見えていたホテルの真ん前にある公園を見学することにしました。ここは別名「イグアナ公園」と言われるように、公園内の木の上にイグアナがワラワラしています。日本では公園と言えばハトかスズメと相場が決まっていますが、所変われば・・・といったところでしょうか。  ガラパゴス諸島の生物の起源についてはまだまだ謎が多いのですが、一説に寄ればここのイグアナがガラパゴス諸島のイグアナのルーツではないかとも言われているそうです。ひとしきり写真を撮り終えた我々は、いよいよガラパゴスへ向けてのフライトに胸弾ませながらグアヤキルの空港に向かいました。  ここでも飛行機はサエタ航空です。トリイさんに荷物を預けてもらって、出発までの間にガラパゴス諸島の説明を受けました。主なものは以下のようなことです。 ・グアヤキルとガラパゴス諸島は約1000km離れており、時差も1時間あるが、船の中はガラパゴス時間ではなく本土の時間で生活している。 ・各島に上陸する場合には10人程度のチームに別れ、ボートにより上陸するが、各チーム毎に資格を持ったガイドが同行して、旅行者に説明しながら行動を監視している。 ・チップは都度支払う必要はなく、クルーに最低50ドル、ガイドに最低50ドルを最後にまとめて専用の袋に入れて渡す。 ・船内ではサインですべてが済み、最後の支払もカードでOK。 ・船室の冷蔵庫の飲み物は有料だか、バー等で飲む分にはすべて無料。 ・毎朝ミネラルウォーターが2本船室に用意される。無くなっていれば午後にはまた補充してくれる。 他にも色々言っていたような気もしますが忘れました。最後に、向こうの空港に着いた時、迎えに来ている船のクルーが我々を識別できるようにと、胸にシールを貼ってくれました。  トリイさんと別れて飛行機に乗り込むと、1.5時間程度でガラパゴス諸島に到着しました。ガラパゴス諸島にはいくつか空港のある島があるらしいのですが、我々はサンクリストバル島の飛行場に降り立ちました。AIRPORTと呼ぶにはおこがましいようなこじんまりとした小さな空港です。ここではガラパゴス国立公園税として1人100ドルを支払わなくてはなりません。ここはカードやトラベラーズチケットは使えませんので、現金を用意しておきましょう。  税金を支払うとガラパゴスエクスプローラーII号(以下GE2)のクルーらしき人が我々の胸のシールを見て寄ってきました。我々の名前を告げるとリストをチェックしたうえで、マイクロバスに誘導してくれました。席がいっぱいになると港に向けて出発しました。港までは5分程度で、そこからはボートでGE2へ乗船することとなります。我々の旅行鞄はそれぞれ30kg以上あってこの乗船方法は非常に心配だったのですが、荷物は飛行機から直接GE2まで運ばれるのでまったく問題ありませんでした。  乗船すると、クルーが笑顔で迎えてくれました。中はホテルのようにきれいで、エレベータも付いているし、これからの航海への不安はだいぶ和らぎました。まず最初にメインラウンジで乗船手続きをする必要がありましたが、名前や住所程度の簡単なもので、おもしろいのは食事の種類を選べることでした。ベジタリアンやライトなものを選択することができたり、牛・豚・鶏肉は大丈夫かといったものがありました。  それらが済むと早速ランチです。飛行機の中でもサンドイッチを食べたのであまりお腹は空いていなかったのですがバイキング方式だったので、好きなものだけ選んで食べることにしました。  食後に部屋へ戻るとカバンがデンと置かれていました。あまりに重いので、途中で海に落とされていやしないかとちょっと気になっていましたので一安心です。妻はちょっと船酔いしたようなので、少し休んでいました。  しばらくするとメインラウンジに集まれというアナウンスがあり、乗客がすべてメインラウンジに集まりました。そこで、船の上での注意事項やスケジュールなどの説明があり、最後にチーム分けが行われました。チームは予め6つに決められており、Aはアルバトロス、Bはブービーと言った具合に動物の名前がつけられています。私はDのドルフィンチームでした。説明は最初英語とスペイン語で行われていましたが、途中で確認したところスペイン語しか分からないという人がいなかったので、以後はすべて英語での説明となりました。書いてあるものならまだしも人が話しているのを聞き取るのは一苦労で、時間や重要な単語を聞き取るのが精一杯でした。  今日は初日だし、このままディナーまでゆっくりするのかと思いきや、飛行機で降り立ったサンクリストバル島の別のポイントに船を進めて上陸するらしいのです。しかもいきなりウェットランディングだそうです。  ウェットランディングとは、GE2からボートに乗って島の目的ポイントまで行き、上陸する際にボートから海におりるため、膝くらいまで海水で濡れる可能性がある上陸方法のことです。主に砂浜からランディングする際に用いられる方法です。これに対しドライランディングは岩壁などの決まったポイントへの上陸方法で、この方法の場合、基本的に靴は濡れることはありません。また、GE2に乗り込む時もそうでしたが、ボートに乗るときには必ずライフジャケットを着用させられます。  チーム毎にそれぞれボートに乗り込みます。波に揺られながら目的の砂浜に向かってボートは進みます。これだけでもなかなかなアトラクションです。そして、砂浜にボートを乗り上げ、乗客はみなボートの縁を乗り越えて海の中に降ります。海はフンボルト海流という寒流が流れ込んでいるせいか、赤道直下という地域にも関わらずけっこう冷たく感じられました。波が来ない砂浜まで来るとガイドがライフジャケットを回収します。そしてチーム毎にそれぞれのガイドがいろいろ説明し、我々が行動して良い範囲を示します。我々ドルフィンチームはサムエルというガイドが担当です。もし、我々が範囲を超えようとしたり、動物に危害を加えようとしたりするとサムエルに厳しく注意されます。  ランディング地点から少し歩くと岩の上に体長10cmくらいの溶岩トカゲを見つけることができました。ガラパゴスに来て初めて間近に見る動物です。結構近くまで寄っても逃げないので、かなりアップの写真が撮れました。また、ちょっと進むと海辺の岩々に茹でたわけでもないのに真っ赤な色をしたカニがたくさんへばりついていました。このカニは脱皮を繰り返す度に赤さを増していくということで、確かに小さなカニは黒っぽい色をしていました。  その先の砂浜にはアシカの群が固まって昼寝をしていました。すぐに近づいて写真を撮りたかったのですが、ちょっと手前でサムエルがチームのみんなを集めてあれがボスで群を護っているとか色々説明を始めました。そのちょっと長い説明が終わると後は自由時間になり、時間になるまで好きなことをして過ごすことができます。そこで、早速アシカ達に近寄ってみたのですが、のほほんと寝ています。触れるくらいに近づくとさすがにボスが吠えるのですが、本気で襲いかかって来るというようなこともなく、なかなか良い写真が撮れました。彼らは人間に慣れているというよりは人間を無視しているという表現の方が正しいような気がします。水着になって泳いだり、シュノーケリングをしたりしている人もいましたが、船内での説明をよく聞いていなかった我々はそういった準備をしていなかったので、長い砂浜を端の方まで散歩したり、アシカの近くに座って夕日を眺めたりしてのんびりとガラパゴスの自然を味わいました。妻の船酔いもいつの間にか直っていました。  時間になったのでGE2に戻ると、我々の船室にワインが用意されており、その横にGE2のキャプテンからディナーへの招待状が添えられていました。シャワーを浴びて服を着替え、そのワインを飲みながら時間が来るのを待ちました。  今日は初日ということもあり、ディナーの前にメインラウンジでクルーの紹介がありました。船医も紹介されていたので、紹介の後、妻のために念のため酔い止めの薬をもらいました。その後、レストランに向かいました。  ボーイにキャプテンからの招待状を見せるとキャプテンのテーブルに誘導してくれました。招待に対するお礼を述べ握手をかわした後、簡単に自己紹介をしました。我々夫婦の他にもオランダから来ている40歳位の夫婦が招待されていました。キャプテンからのお誘いということもあり、妻はわざわざ日本から持ってきた浴衣を着込んできたのですが、これが外人には非常に受けてなかなか良いコミュニケーションが取れました。招待されたと言っても食事の内容は他の人と違うわけではないのですが、1日に2組4人を招待するとしても4日では16人しか招待されないことを考えると、招待された我々は非常に光栄だったということでしょうか。  食後はメインラウンジで明日ランディングする島々の説明(ブリーフィング)があるのですが、お酒も入りお腹いっぱいの我々は、スライド上映のため部屋が暗くなるとすぐに眠りこけてしまいました。部屋が明るくなって目が覚めるとブリーフィングは終わっていました。部屋に戻るとそのまま寝てしまいました。 【第4日:12月20日】  GE2の朝は早く6時45分には軍隊式に起床のアナウンスが流れます。眠りが深かったせいか寝起きはそんなに悪くはありません。妻が支度をしている間にデッキに出てみることにしました。デッキから見るガラパゴス諸島の朝日は美しく、しばし見とれてから写真を数枚撮ります。朝食は7時15分からでした。朝食は昨日のディナーと同じレストランでバイキング方式です。主食はパンかシリアルかホットケーキといった感じで、ご飯やみそ汁はありません。バイキングとは言っても、それぞれのテーブルにはボーイが付いていて飲み物などは言えば持ってきてくれます。彼らの英語はスペイン語なまりがあってちょっと聞き取りづらいです。  ともかく食事を終え、フロントに行きシュノーケリングセットを貸してもらうことにしました。シュノーケリングは学生の頃に一度やったことがあったと思いますが、「できる!」というほどのものではないし、彼女にいたっては泳ぎもろくにできないというありさまですがとりあえず借りておくことにしました。この船では一度借りたら最後の日まで自分で持っていて必要なときに島に持っていくといった運用方法のようです。  部屋に戻り一休みしていると、ランディングするのでメインラウンジ集まれというアナウンスがありました。まだ8時です。後から行くわという訳にもいかないので昨夜のブリーフィングで説明のあったとおり準備を整えメインラウンジに集合しました。いくつかのチームは先に出発していましたが、我々のドルフィンチームはまだのようでした。ライフジャケットを着用し、ボートに乗り込みます。目指すはバルトロメ島です。今回はドライランディングですが、今日の午前中の予定はちょっと複雑で、最初のポイントから戻ったらGE2に戻らずにバルトロメ島の別ポイントにボートで移動してウェットランディングするというのです。そのため我々は部屋に備え付けてあったポパイが担いでいるようなバックにシュノーケリングのセット・ビーチサンダル・タオル・飲料水・サンタンローション等を入れて持ってきています。  まず最初のポイントにドライランディングしました。どうやら目の前にそびえている山に登るようです。さっさと行けばよいのにサムエルがまた偉そうに長々と説明をしています。英語では何を言っているのかよく分からないので、鳥や風景の写真を撮っているとようやく説明が終わったようです。それにしてもこの島は緑がほとんどなく、噴火した溶岩に覆われたままといった感じで何とも圧巻です。それでもところどころに溶岩サボテンがたくましく生えていたりします。我々が歩いて良い範囲の両端には木の杭が打ち込まれており、それ以上先にいくとサムエルに怒られてしまいます。山の頂上までの斜面には木の階段が設置されており、多少自然が破壊されています。  頂上までいく間に見た動物は、鳥の他は溶岩トカゲとバッタだけでした。溶岩トカゲは近寄ってよく観察していると、のどの部分が赤いものとそうではないものがいることがわかりました。そのことをサムエルに聞いてみると、のどが赤いのは雌だと言っていました。もしかしたら逆だったかもしれません。ともかく喉元の色で雌雄が判別できるようです。溶岩トカゲのために多くのフィルムを使っているうちに頂上につきました。さすがにこれは朝一番でなければ暑くてやってられないだろうなと思いながらも頂上から見るすばらしい景色には感動しました。ちょっとオーバーかもしれませんが、地球上にまだこんな美しいところがあったとは驚きです。  このクルーズには小さな子供から還暦を過ぎた老夫婦まで老若男女が参加しています。我々のチームにはそういったファミリーや老夫婦はいないのですが、他のチームには何人かはいます。山を下りる途中、これから登ろうとする他のチームとすれ違いましたが、さすがにお年寄りにはきついようでした。  ドライランディングのポイントまで戻るとボートが待っていました。ドライランディングとはいえ、岩場の波はけっこうはげしく、サムエルが船を引き寄せていてくれてはいますが、ちゃんとタイミングをはかって乗り込まないと大変なことになります。そうそう、ライフジャケットの着用も忘れてはなりません。チームの全員が無事ボートに乗り込むと、早速次のポイントへ向けて移動開始です。  次のウェットランディングのポイントへ進む途中、岩壁に2羽のガラパゴスペンギンを見つけることができました。このペンギンは大人になっても50cmくらいにしかならない小型のペンギンだと昨夜のディナーの時にキャプテンが言っていました。また、キャプテンはガラパゴス諸島の動物の中でこのペンギンが一番好きだとも言っていました。なぜ、こんな赤道直下のガラパゴス諸島にペンギンがいるのかについては謎が多いらしいのですが、フンボルト寒流のおかげらしいです。とにかくかわいいという事実は疑いようがありません。船頭さんもわざわざボートのスピードをゆるめ、ペンギンに近づいてくれました。  ウェットランディングした後はシュノーケリングを楽しみました。海水はやはり冷たかったのですが、山登りで火照ったカラダにはちょうどよく、サンサンと輝く太陽に照らされながら美しい海の中の魚達を見て回りました。妻はちょっと疲れたのかはたまた怖じ気づいたのか、砂浜でアシカを眺めながら休憩していました。私が砂浜に上がってくると、妻は小さなアシカが寄ってきて足に触れていったと言うのです。どうやらどんな動物でも子供は好奇心が旺盛なようです。  GE2に帰るときのボートはチーム毎ではありません。帰る準備ができた人から待っているボートに乗り込み定員になるとそのボートは出発するのです。GE2へ帰ると、船内に入る前にホースから出る流水で足やサンダルについた砂を洗い流してくれます。船内に入ると、ちょっとした温かいツマミがあり、日本的に言えば「お10時」といったところでしょうか。なかなか気が利いていますね。  私は部屋に荷物を置くと、船尾のプールデッキに行きプール横のジャグジー風呂に水着のまま入りました。もちろん露天です。最初のボートで帰ってきたせいか、まだ誰もいませんでした。ここにもバーカウンターがあり、ビールを注文すると持ってきてくれました。カナッペ等のツマミも用意されており食べ放題のようです。ガラパゴスの青い空、青い海、そして美しくも険しい島々に囲まれながら、1人ジャグジーに浸り、昼間っからビールを飲む。うーん、これはもうたまりませんね。鳥達が頭の上を飛んでいったりした日にはもう、ガラパゴスを満喫って感じです。そうこうしている間に1人2人とジャグジーに入ってくる人も増えました。ぎこちない英語で会話を交わしますが、やはり、アメリカから来ている人が多いようでした。  今日のランチはこのプールデッキでのバイキングとなりました。妻を呼びに行き、日陰のテーブルを確保しました。でも、外人はとにかく太陽が好きなようで、好んで日向を選んでいました。早起きし、山登りやシュノーケリング等の運動をしたせいか、けっこうな量を食べることができましたが、ちょっと食べ過ぎのような気もします。デザートはとにかく甘過ぎで、日本人向けではありませんね。  ランチが済むとシエスタタイムです。シエスタとは簡単に言えば昼寝をして体を休めようということです。つまり暑い日中の活動は避け、涼しくなってくる午後3時くらいから活動を再開するという暑い地域の生活の知恵ですね。郷に入っては郷に従えということで、我々もベットで横になることにしました。  アナウンスに起こされるまで、2時間ほど寝ていたでしょうか。アナウンスは「午後のランディングだぞ!」というものでした。目をこすりながら準備をし、メインラウンジに集まります。シエスタタイムのうちにGE2は移動しており、午前中のバルトロメ島とは別のサンチヤゴ島へのウェットランディングです。このベットで寝てる間に移動していてくれるというのが、クルーズの良いところですね。  サンチヤゴ島には人が住んでいるようでした。丘の上にある学校らしき施設の広場では子供達がサッカーをしていました。やはり南米といえばサッカーなんでしょうね。そんな光景を横目に見ながら草原を進んでいきます。そう、この島は緑が豊富です。うちわサボテンもたくさん生えています。ダーウィンじゃないですが、ガラパゴスの島は近くにあるのにそれぞれみんな違った印象です。ここでも木や草を差しながらサムエルが何やら言っています。動物のいるところで話して欲しいものですが、そんな私の気持ちは分かってもらえないようです。  チームは進み、ランディングした砂浜とは別のサイドの海岸線に出ました。ここには海イグアナが海から上がってきていました。妻は大喜びです。あの何とも言えない顔が良いのだそうです。かく言う私も同類ですので、カメラはフル稼働です。ガラパゴスの動物はみなそうですが、普通の野生動物と違って人間が近づいても逃げません。これは超望遠のレンズ等を持っていない即席アマチュアカメラマンにとっては非常にありがたいことです。とは言っても近付きすぎれば、それなりのリアクションはあります。海イグアナの場合は体内の海水を鼻からピュッと水鉄砲のように噴射します。まぁ、飛んだとしてもせいぜい1m位ですから大して警戒することもないのですが、顔のアップを撮ろうとしてこれをやられると、カメラが心配です。海イグアナの頭が白いのは、この潮吹きの際の海水が自分の頭にもかかっていて、それが乾燥して残った塩が積み重なったものだと言われています。海イグアナはあのごつそうな顔には似合わない菜食主義者で、海中の海草や岩に付いた岩海苔を食べています。その動きも海中ではいざしらず、地上ではじっと動かずひなたぼっこばかりしています。動いたとしてものそのそ歩くだけで、人間に向かってくるということもありません。  カナリヤのような小さくてきれいな黄色の鳥も見ることができました。その他には午前中にも見たペリカンやグンカン鳥もけっこういました。  海岸線の端まで行くと、今度は内陸を通って戻ることになりました。この帰りの道ではトカゲ以外の動物は見ることができなくてちょっと残念でした。ランディングポイントに戻ると、フリータイムになったので、またシュノーケリングをしました。しかし、夕方になって海水もちょっと冷たくなってきていたので、すぐに砂浜に戻り、アシカを眺めながらボートの来るのを待つことにしました。  GE2に戻るとまた何やらツマミが用意されていました。のども渇いていたのでピアノバーに行ってコークとオレンジジュースをお願いしました。トリイさんが言っていたように部屋の外ではいくら飲んでもただのようです。部屋に戻るとシエスタで使用したベッドもまたメイクもされています。この船は本当に至れり尽くせりの贅沢な船だなぁと感心しました。シャワーを浴びてデッキに出ると夕焼けに照らされた素晴らしい風景が広がっていました。このガラパゴスは時間によって色々な表情を見せてくれますが、夕焼けはまた格別ですね。  今日のディナーは、妻と二人で気兼ねなく食べることができました。キャプテンの机にはまた別の2組の夫婦が招待されていました。こうやって見てから招待されればだいたいの雰囲気も分かろうっていうものですが、いきなり初日から招待されて昨日はとてもあたふたしてしまいました。  妻は疲れたらしくブリーフィングには参加せずに先に部屋に行って寝てしまいました。このブリーフィングはけっこう重要で、明日のランディングはウェットなのかドライなのか、また、シュノーケリングはできるのか、その島ではどんな動物が見られる予定なのかといったことが説明されます。この説明はガイドが毎日交代でやるようなのですが、早口なのでよく分からないことが多いのです。そんな時、同じドルフィンチームのジョーやジョンに聞き直すと、親切に教えてくれました。彼らはカップルやファミリーが多いこのクルーズにあって、ボストンから男2人で来ていました。ブリーフィングが終わると、そのメインラウンジでピアノコンサートがありました。途中まで聞いていましたが、妻のことも気になったので部屋に戻ってみると妻はもう寝ていました。  私はシエスタのおかげか大して眠くなかったので、デッキに出てみることにしました。予想通りというか予想以上というか、船の外には満点の星空が広がっていました。オリオン座も見つけられましたが構成されている星の数が違います。また、白っぽい帯のように広がっている天の川にも感動しました。明日は妻にも見せてあげたいなと思いながら部屋へ戻りました。 【第5日:12月21日】  今日は起床のアナウンスの前に起きました。生活のリズムが朝方になってきているのでしょうか。朝飯前に朝日を見ようと今日もまたデッキに足を運びます。先客が数名いましたが、軽く挨拶をしながら写真を撮ります。朝食は早くいった方が空いているので、そうそうに退却し、妻を連れて早速レストランに行くことにします。ボーイは我々のことを覚えていて、昨日の席に案内します。バイキングとはいえ、毎日ちょっと違うメニューです。ヨーグルトとパンケーキがとてもおいしいです。  今日の午前中はイザベラ島のタグスコープです。この入り江は非常に波が静かで湖のようです。そのため、昔の捕鯨船は海が荒れるとここで停泊していたとのことです。岸壁には暇を持て余した船員達によって書かれた文字がかなり高いところまでビッシリです。そんな岸壁を眺めながらボートはランディングポイントを目指します。朝一はドライランディングで、また山登りのようです。  ランディングポイントは非常に狭く、その先の岸壁沿いの通路は数10cmしかありません。10mほど行くとちょっと落ち着けるところに付きました。ここでライフジャケットを脱ぎ、ガイドに渡します。この岩場にもアシカはいました。アシカも今となっては特別なものではなく、そこにいるのが当然という感覚になってきています。とはいえかわいいものはかわいいので写真を撮ってしまいます。我々がやってきたため、彼らは奥地へ行ってしまいましたが、後には糞尿の臭いが漂っていました。そこでサムエルが説明をはじめます。  やっぱり山登りでした。今回の山は緑が茂り、人口の階段も最初の急な部分だけです。ここでもやはり動物は見ることができません。山を登っていくと、我々がランディングした地点のすぐ裏に湖が見えてきました。隕石が落ちてそこに水が貯まったような感じです。途中途中でサムエルが草木等の説明をしている間に写真を撮りましたが、頂上と思われる地点からの風景が一番良かったです。ひとしきり堪能すると下山です。  時間はまだ早いです。今日はこれから、GE2に戻る前に岸壁に沿ってボートで走らせます。最初に目に入ってきたのはアオアシカツオドリですが、写真で見たように本当に足が水色です。巣もあるようです。動物を見つけるとボートはスピードを落とし、岸に寄ってくれます。場合によってはボートを止めて写真を撮る時間を十分くれます。こちらにお尻を向けていた1羽が白いフンをしました。岸壁の白い部分はこれらのフンの積み重ねということだったんですね。次に見えてきたのは昨日のバルトロメ島でもちょっと見ることができたガラパゴスペンギンです。今日はちょこちょこ歩いたりしていてかわいさ20%アップといったところでしょうか。当然アシカや海イグアナもいますが、この辺りにいるのは群ではなく、群からはぐれて数匹がちょっとずついるといった感じです。  サムエルに言われて見上げてみると絶壁の上に山羊がいます。あれはガラパゴスヤギといって・・・というのはウソで、人間がこのガラパゴス諸島に住むようになってから持ち込んだ家畜の山羊が逃げて野生化してしまったものです。今では1万頭以上に繁殖してしまっているそうです。この問題は非常に大きな問題で、本来ゾウガメ達が食べるべき葉や草を山羊が食べてしまうことによってゾウガメ達が餓死してしまうということもあるのだそうです。16世紀以降、山羊に限らず豚や植物等もそうですが、本来ガラパゴス諸島にない種を人間が持ち込むことによって、それぞれの島にあった進化を遂げてきた動植物の生態系に大きな打撃を与えているというのです。島の何かを傷つけたり持ち帰ったりするのも自然破壊ですが、ここでは何かを持ち込まれることによって起こる自然破壊についても非常に神経を尖らせています。  今度は海の中です。大きなウミガメが水面近くを泳いでいます。おおー、カメだカメだ!ボートが近づくと下に潜ってしまうようですが、ところどころで2〜3頭見ることができました。ボートを走らせていると大きなアシカがボート横をすり抜けていきました。ボートで追いかけると、「しつこいぞ!」と言わんばかりに大きな水しぶきを浴びせかけられ、みんなカメラを守るのに大変でした。こんな感じで岸壁沿いを往復しGE2に一度戻りました。  GE2に戻るやいなや、私はシュノーケリングの準備をしてすぐさまボートに戻りました。今日の午前中は盛りだくさんで、これから希望者だけシュノーケリングに行くのです。今回はボートの上から足の着かない海に直接入りますので自信のない人は船で休憩です。ということで妻もGE2から私をお見送りです。  さっき見学した岸壁とは反対の方向にボートは進み、岸壁に近いポイントで海に飛び込みます。今回は各自自由にシュノーケリングというよりは、岸壁沿いの決まったコースをみんなで泳いでいくという感じです。その先で今乗ってきたボートが待っていてくれるという形になっています。しかし、今日の海は昨日に比べすごく冷たく感じられます。  それでも海の生物の美しさに導かれながら、チームのメンバーを追います。実際には希望者だけということで、チーム毎ではないのですが、ドルフィンチームのメンバーはアグレッシブな人が多く、こういう時にはなぜか最初のボートに固まってしまうようです。初日のディナーで一緒に招待されたオランダ人夫婦もドルフィンチームだったのですが、実は4人の子供がいて一番下の子は産まれたばかりの9カ月だというから驚きです。そんな子供を国に残してこんな所でシュノーケリングしているんですから・・・外人は違いますね。  それはともかく、海の生物を眺めながら進みましたが、もしかしたらと思って期待していたウミガメとのランデブーは実現しませんでした。運が良ければそういうことも十分あり得たポイントだっただけに残念です。  GE2に戻ると私はすぐにジャグジーです。その横のテーブルでは妻が船内のショップで買ったばかりの絵はがきに何やら書いています。そんな光景も視界の一部に納めながらやはりビールです。うーん、これこれ!!とか言いながらジャグジーの周りを見ると、顔より大きいエビが2匹うごめいていました。シュノーケリングの時にだれか持ってきたのかなとか思いながら手にとって色々見てみましたが、日本のエビとはだいぶ違う感じです。近くにいた子供の顔の前に持っていくと怖がって後ずさっていました。  プールデッキでのランチが済むと例によってシエスタタイムです。実際やってみると、このシエスタは本当にいいシステムだと思えます。このハードなスケジュールについていけるのもシエスタあってのこととも言えます。我々はこのシステムが非常に肌にあったため、オーランドに行っても続けていました。(日本に帰ってきてからもお正月の間は続けていました。)  シエスタタイムも終わり午後のランディングです。今回はフェルナンディナ島のエスピノサ岬へドライランディングです。フェルナンディナ島近辺はものすごい波でした。ボートで進むラインにもけっこうな波がやってきて、気分はアドベンチャーです。そんな波間をくぐり抜け、ボートは波の穏やかなマングローブの入り江に入りました。ランディングする前の岩場でクロアジサシやガラパゴスコバネウ、泳いでいるガラパゴスペンギンも見ることができました。ガラパゴスコバネウは追われる敵がいないため飛ぶ必要が無くなり羽が退化してしまったウの仲間です。  我々は無事ドライランディングし、マングローブ林の中の小道を進んでいると、その道を埋め尽くすような海イグアナの集団に出くわしました。海イグアナ達の皮膚は一見すると地面の溶岩のようでした。そんな海イグアナたちを踏まないように注意しながら進むのですが、顔の前に足を出してしまうといくらおとなしい彼らでも鼻から潮を噴いて威嚇してきます。  林を抜けると、一面を溶岩に覆われた場所に出ます。ガラパゴスは島によって、また同じ島でも場所によって色々な顔を見せてくれます。溶岩の大地は触ってみると温かく感じました。サムエルは溶岩の説明をしています。ここではちょっとショッキングなものを発見してしまいました。それは、海イグアナの死骸です。日光浴の格好のまま白骨化してしまっています。97年の大型のエルニーニョとその反動とも言われるラニーニャによって、彼らの生活環境は大きく揺さぶられたと聞いていましたが、その結果がこれなのかと思うと悲しい気持ちになりました。エルニーニョが発生すると、海水温が上昇し、海草や海中の生物が死滅するため、それらを主食とする動物達は非常に大きな影響を受けることになります。特に1982年〜1983年のエルニーニョは強力で、ガラパゴスペンギンの73%とウミイグアナの70%が死亡したと言われています。  しかし、海辺の方へ行くとそんな気持ちも吹き飛ばすほどの数の海イグアナがあちこちで体を寄せ合っていました。小さな子供も見つけることができました。ちょっと安心するとともに写真を山ほど撮りました。ウミイグアナは3000種類以上いるトカゲの中で唯一、肺呼吸でありながら身体機能を水中での活動に適応させたトカゲです。水中にいるときは心拍数を低くすることにより長時間の潜水が可能となります。  先に進むとカニがワラワラと岩の間で蠢いています。よく見ると、このカニは前にも進んでいます。さらに驚くことに岩と岩の間をピョーンとジャンプして渡っていきます。カニが飛ぶのははじめてみました。  雨こそ降りませんでしたが、空は曇っていて風が吹くとちょっと肌寒い感じがしました。ガラパゴスへ来て初めてのことです。まぁ、首筋が焼けなくて良かったかもしれません。その後は砂浜で昼寝をしているアシカ達を横目で眺めながら海岸線をだらだらと歩き、ボートへ戻りました。  妻はかなり寒かったようで、GE2に戻ると早速部屋で熱いシャワーを浴びていました。私はバーでドリンクをもらってから部屋に戻り、妻の後にシャワーを浴びました。今日はディナー前に明日のブリーフィングがあるということで、けっこう急いで支度をしました。今日のディナーのメインは昼間ジャグジーのところにいたのと同じエビでした。これが味付けも良くてとてもおいしかったです。毎日ごちそうで運動しなかったら太りまくってしまいそうです。  デザートも終わり部屋に帰ろうとするとボーイがもう少しそのまま待っているようにと言うのです。言うとおりにしているとクルーが海賊の格好をしてレストランに乱入してきました。乗客2名も王様・女王様のような格好をして何か叫んでいます。王様の指示に従って海賊の格好をしたクルーはテーブルの乗客を前に連れてきて、ペンギンやアシカ等のまねをさせています。外人はノリが良くて連れ出された人もオーバーなアクションで期待に応え大盛り上がりです。朝から晩までクルーも大変だな、とは思いながらも、素直に楽しめました。  その後はメインラウンジに移ってダンスタイムということでしたが、こちらはちょっと遠慮させてもらって夜空を眺めることにしました。天気が気になっていましたが、外に出てみると昨日と同じように星空が満天に広がっていました。妻も感激したようで星座板を持ってくれば良かったねとか言いながら2人でしばらく眺めていました。 【第6日:12月22日】  早いもので、明日はもうガラパゴスを離れなければならず、今日が実質的にはガラパゴス最後の日です。夜も早く寝てしまうからかもしれませんが、朝は6時45分のアナウンスより早く目覚めるようになりました。朝食前の日課のように外に出て朝日をカメラに納めます。空気もおいしく、ここ数日間の間に何だかすごく健康になったような気がします。  今日の午前中はラビダ島へのウェットランディングです。このラビダ島の浜は赤茶色の砂浜でこれまでのどの島の砂浜とも異色な感じです。ここでもアシカや海イグアナが我々を出迎えてくれます。イザベラ島の湖ほどではないですが、砂浜際の低木の向こうに湖があり、遠くにフラミンゴが見えます。この湖に近づくと生臭い臭いが立ちこめてきました。よく見ると湖のほとりには無数の魚の死体が打ち上げられており、これが悪臭を放っている原因であることが分かりました。鳥達にとってはごちそうのようで、見てる側からついばんでいる鳥も見られました。  湖のほとりをフラミンゴの方に向かって歩いていきましたが、フラミンゴは岸から遠く離れたところから動かず、だいぶ粘ったのですが間近に見ることはできませんでした。とても高そうな超望遠レンズを付けたカメラを持っている人がバシャバシャとシャッターを切っているのを見て、80mmまでしかない私は非常に羨ましく思ったものです。  ランディングした砂浜に戻った後は自由時間です。この自由時間は貴重です。なんと言ってもこのガラパゴスで最後のシュノーケリングのチャンスなんですから。セット一式借りておいていままでほったらかしだった妻も、せっかくだからということで、おそるおそるチャレンジしてみることになりました。しかし、足がつかなくなるとうまく浮いていられないようなので、サムエルに無理を言ってボートに乗るときに必ず着用させられるあのライフジャケットを借りました。これで安心したのかその後は特に問題もなく海中の魚等を見ていました。すると、水族館でしか見たことのないおでこが出っ張ったあのナポレオンフィッシュを発見しました。他にも大きな魚がいたんですが、名前はよく分かりません。  足ひれの使い方がうまくないせいかあまり早く移動できない妻の手を引っ張って岩場の方に進んでいくと、そこにはアシカが2頭戯れていました。絡み合っては海に潜り、また、岩場にあがってを繰り返していましたが、海の中では非常に動きが早く、我々の横をすり抜けていきます。アシカの足(ヒレ?)が私の体をかすっていったときには正直ちょっと怖かったです。しかし、野生のアシカと海の中で一緒に泳げるなんて、ガラパゴス以外では考えられないでしょう。妻も大興奮で、シュノーケリングに挑戦して良かったとしきりに言っておりました。  みんな慣れてきたのか、特にシュノーケリングをしない人たちは早々にライフジャケットを着込み、荷物をまとめてボートが来るのを待っています。帰りのボートはチーム関係なしですので、早いもの順です。それとは反対に少しでも長く海で泳いでいたい人は最期のボートまで待っています。  GE2に戻るとこれも慣習になっているランチ前のジャグジーです。今日は昨日までの純粋な開放感と感動の中に「今日で最後か・・・」という寂しさや悲しさといった感情が含まれていました。しかし、そんな暗い気持ちもガラパゴスの太陽は吹き飛ばしてくれるような感じです。そこで、ビールを飲み干しジャグジーからあがるとランチまでの間デッキチェアーで体を焼くことにしました。既に鼻の頭などはもう一皮むけ、体もけっこう黒く、首筋などはヒリヒリと痛いくらいです。ヒゲも日本を出てから一度も剃っていないので、かなりワイルドな風貌になってきています。自分で言うのもなんですが、私の場合身長も180cm以上あるし体もガッチリしているので、そんじょそこらの外人には負けません。  ランチを食べていると外人の子供がゲームボーイをやっていました。よく見ると私が飛行機の中でやろうと思って持ってきたカラーゲームボーイのクリアパープルを持っているではないですか。もうアメリカでも発売されていたんですね。そこで、部屋に戻ってポケモンのカートリッジを貸してあげると説明書も無いのに適当に動かしては、オーとかワオとか言って喜んでいました。日本のカートリッジはアメリカのハードでも動くことが検証できて面白かったです。また、ピカチュウはアメリカの子供も知っていて、人気があること、ゼニガメはアメリカでは名前が違うことも分かりました。  今日のシエスタはちょっと長く感じられました。というか、実際、次の島に着くのが遅れているようで、これは非常にショックなことです。なぜかというと、次の島はこのツアー最大の目的地であるダーウィン研究所があるサンタクルズ島だからです。  そもそもガラパゴス諸島に来たのは、このサンタクルズ島のダーウィン研究所に保護されているというガラパゴスゾウガメのロンサムジョージに会うためなのです。一口にガラパゴスゾウガメと言っても大きく分けて、低いところの草を食べるのに適したドーム型の甲羅を持つ種と、高いところの木の葉やサボテン等を食べるのに適した鞍型の甲羅を持つ種とに分類できます。また、細かく分類するとガラパゴス諸島の島ごとに独自の進化を遂げた固有種は全部で15種におよびますが、船乗り達による乱獲により、フェルナンディナ島・フロレアナ島・サンタフェ島のゾウガメは既に絶滅してしまっています。  そして1972年、絶滅したと思われていたピンタ島で鞍型のガラパゴスゾウガメが発見されました。ピンタ島の固有種としてたった1頭になってしまった彼はロンサムジョージと呼ばれるようになりました。その後ロンサムジョージは、最後のピンタ島固有種を保護する目的でサンタクルズ島のダーウィン研究所(1964年設立)に移され、今は種として似ている他の島の2頭の雌と同じ敷地に暮らしているのですが、推定年齢100歳という老齢のためかあまり興味を示さず、繁殖は難しいと言われています。  そんな彼に早く会いたいと気持ちは焦るのに、なかなかランディングできずイライラしていましたが、約1時間遅れの16時にはランディングできることになりました。サンタクルズ島へはドライランディングです。ランディングポイントはプエルトアヨラというガラパゴスでも一番大きな町で、車も走っています。予備のフィルムやお土産を入れるための大きな袋も準備しダーウィン研究所に向かいます。しかし、船着き場近くの露天の土産屋で早速グッズ収集です。サムエルにもう行くぞと急かされ、ダーウィン研究所までバスで向かいます。  途中の道には両側に土産屋がたくさん軒を連ねており、カメグッズコレクターにとっては垂涎のストリートです。ダーウィン研究所内には一般の車は入ることができないようで、入り口のところでバスから降ろされ、帰りは今来た道を各自歩いて帰るようにとサムエルから説明がありました。また、最終のボートは予定より1時間遅い19時にこの島を出ることになっているから遅れるなとも言っていました。これは我々にとって非常にラッキーでした。到着が遅れたときはどうしようかと思っていましたが、これでグッズの収集も何とかなりそうです。  入り口からちょっと歩いていくと敷地内にもホテルがありました。ここにステイというのも良かったかもしれません。さらに行くと土産屋がありました。ダーウィン研究所のオリジナルグッズはこことさっきのホテルの入り口のショップでしか手に入らないようなので、とりあえずいくつかゲットしておきました。ゲットしたグッズのひとつである帽子は早速かぶることにしました。チームのメンバーは先に行ってしまっていましたが、すぐに追いつきました。  そこには何頭もの大きなガラパゴスゾウガメが放し飼いにされており、間近で彼らを見ることができました。このエリアにはけっこう岩や階段等の凹凸があって彼らは大丈夫なのかなと思うのですが、そういう環境が自然に近くていいのかもしれません。また、そんななか妙に平らな8畳分くらいのスペースがあり、その中央に行ってみると、サムエルに「そこは彼らの食堂だから入ってはダメだ」と注意されてしまいました。どうやらここに餌が置かれるようです。このエリアでは妻と2人してかなり写真を撮りました。  コースに沿って次に進むことになりました。ここから先はかなり広いとはいえブロックに囲まれた中のゾウカメを見ることになります。それぞれの島の亜種毎に分けられているようです。中には木の陰になってしまって見えないところもありました。  そして我々はついにロンサムジョージのエリアにやってきました。囲いの中でゾウガメが動いています。チームのみんなも「ジョージ!ジョージ!」と声をかけますが、ちょっと小さいようです。するとサムエルがあれはジョージのお嫁さんであってジョージじゃないと説明しています。サムエルによると、ジョージは非常にシャイであまり人前には出てこないで、奥の方でじっとしていることが多いとのことでした。彼を目当てにここまで来たのに見ることができないなんてすごくショックでした。かなりそこにいましたが、出てくる気配がないので仕方なく次に進むことになりました。  その先にはうちのGAIAよりちょっと大きい甲長20cm程度の小さなガラパゴスゾウガメ達が檻の中で飼育されていました。彼らの甲羅には番号がペンキで書かれていて一目で区別できるようになっていました。これがあんなに大きくなるのかと目を疑いたくなりますがこれはこれで非常にかわいくてその場に釘付けです。いくつかのオリに分けられていますが生まれて1〜2年は、檻の中にある箱の中に入れられその箱のうえにも網がかけてあってかなり厳重に保護されています。お土産にガラパゴスゾウガメの子供を持って帰ってきてくれという人もいて、隙あらばと思っておりましたが、これではいくらなんでも無理ですね。昔はかなりオープンだったそうですが、お土産に子ガメを持って帰る観光客がけっこういたため、だんだんと厳しくなっていったとグアヤキルのトリイさんは言っていました。  最後は資料館のようなところで、甲羅の標本や島毎の甲羅の形状の違いをまとめたパネルなどが展示されていました。こうして一回りしてみると、思っていたのに比べてダーウィン研究所ってけっこうせこいなぁと感じました。実際我々が見ることができるところの他に色々とあるのでしょうが、もっと立派でもっとカメもたくさんいて土産売場ももっと広くて色々あると思っていたのですが、ちょっと期待しすぎていたようです。  この資料館を最後に自由行動ということになりました。そこで我々は今来た道を逆に走り、もう1度ジョージのエリアに戻りました。すると、そこには他のチームが集まっており、ガイドの説明を聞いています。そしてガイドが何やら奥の方を指差しています。その指差す方向を鞄から取り出した単眼鏡で見てみると甲羅のお尻の方が見えました。ガイドはあれがジョージだと言っているようです。ちょっと遠くて実際の大きさもよく分かりませんがガイドがそういうならそうなんだろうと思うことにしました。とにかく、念願のロンサムジョージを一部とはいえこの目で見ることができて、なんか肩の荷が下りたような気がしました。  その後はさっきと逆の順路で土産屋までもどり、買い逃したものをゲットし、ホテルのショップに向かいます。行きに通った道と違う道を通ってしまいちょっと迷いましたが何とかたどり着きここではTシャツなどの服を中心に買いあさります。  国立公園を出ると船着き場までは土産屋の連続です。ショップに入ると右も左もカメカメカメで、もうカメグッズコレクターは気が狂いそうになります。値段的にはTシャツが米ドルで12ドルくらいするので、決して安くはありません。こちらの物価を考えるとそうとうなボッタクリとも言えるでしょう。しかし、カルテルを結んでいるのかどの店もほとんど同じ価格でした。  ここでは現地通貨スークレの他に、米ドルやトラベラーズチケットも使えます。マイアミの渡瀬さんはカードも使えるようなことを言っていましたが、ちょっと怖いのでカードはやめておきました。2〜3軒見たところでもう結構時間が迫っており、私が選んでは妻が支払い、妻が支払っている間に私は次のショップに走り物色するといったRUN&BUYの連係プレーで、プエルトアヨラのおおかたのSHOPはチェックしました。また、今回は大きめのものはパスせざるを得ませんでしたが、そのいくつかは写真に収めることで我慢しました。  しかし途中からはそんな時間もなくなりとにかく最終のボートに間に合うよう重いグッズを抱えながら船着き場まで走りました。船着き場近くの最後のショップではサムエルもまだ買い物していたので、これでおいていかれることはない、とホッとすると同時にまたグッズを買っていました。サムエルと一緒にボートに到着すると、やはり我々が最後だったようで、空いている席に腰を下ろすとすぐに動き出しました。  スケジュールが遅れているので、GE2に戻るとすぐにディナーという感じでした。ただ、今日は最後のディナーなので、ちゃんとシャワーを浴びてから妻はまた浴衣を着てレストランに向かいました。初日のディナーの時も着たのですが、やはり外人には受けが良いようで本人は上機嫌でした。私も持ってくれば良かったです。  ディナーの後はメインラウンジでブリーフィングです。我々はいよいよ明日下船する5日間のツアーですが、ツアーによっては8日間というものもあり、その人達とは明日の予定が異なります。5日間組には、ガイド用とクルー用のチップ袋が渡され、最低50ドルずつは入れて明日フロント横のボックスに入れるよう説明がありました。また、カバンには行き先のシールを貼っておくようにとシールも渡されました。その後、証明書のようなものがキャプテンから1人ずつ手渡されます。我々はそれぞれ GREAT FRIGATEBIRD(軍艦鳥)・MAGNIFICENT FRIGATEBIRD ということで海の王様ネプチューンに証明されました。どうせなら GREAT GIANT TORTOISE とかにしてくれれば良かったのになとも思いました。  部屋に戻ると明日の下船に備えてグッズの梱包作業が待っていました。今日はまだ眠れそうにありません。 【第7日:12月23日】  とうとうガラパゴス最後の朝がやってきました。こんな朝がずっと続けば良いのになと、叶わぬ夢を見ながら朝日を眺めてはシャッターを押します。ちょっと早すぎたかなと思いながらも7時にレストランへ行ってみると、既に用意はできておりWELCOMでした。  今日は朝食を食べたらすぐ空港へ行くのではなく、サンクリストバル島の THE NATURAL HISTORY MUSEUM を見学した後、いったんGE2に戻ってランチを食べてから空港へ行くことになると昨日のブリーフィングでは言っていました。ランディングはいつもより遅い9時半だったので、我々はランディングの前に、ガイドとクルーへのチップ袋をフロント横のボックスに入れました。金額は最低ラインの50ドルずつです。また、借りていたシュノーケリングのセットを返却し、GE2内の今日までの買い物の代金をフロントで精算しました。現金は昨日の買い物でほとんどなくなっていたので、ここはカードで支払うことにしました。明日マイアミへ向かう時にエクアドルの空港で支払う空港税は現金で支払わなくてはならないので、その分の現金は最低確保しておかなければなりません。ガラパゴスの後はオーランドへ寄る予定になっているのですが、旅の半ばにして既に現金やトラベラーズチェックが無くなってしまうとは思いもしませんでした。文章だと大したことなく感じるかもしれませんが、けっこうやばい状況です。それにしても恐るべきはカメグッズ。悲しいかなあの魔力には勝てません。  サンクリストバル島の近くに、ぽつんと海中からそびえ立つ大きな岩の固まりがあります。これがキッカーズロックという岩で、なかなか迫力があります。GE2はわざわざこの周りを1周してくれてからランディングのポイントへ向かいます。  時間になるととりあえずはサンクリストバルへランディングです。初日にGE2に乗船するためにボートに乗った場所へのドライランディングですが、その後は空港とは逆の方向へバスに乗って移動します。 THE NATURAL HISTORY MUSEUM へは5分くらいですぐに着きました。建物は新しく、できたばかりといった感じです。展示場の中もけっこういいデザインで、ダーウィン研究所がかわいそうになってしまいます。ただ、ここには動物が1頭もいないという点がポイント低いですね。  ひとしきり全体を見終えてみんなが出てくると、我々を乗せたバスはランディングポイントへ戻ります。そこで、1時間の自由時間となりました。サンクリストバル島の町はサンタクルズ島に比べると、この島に住んでいる人達のための店が多いようです。土産屋も少なく、お金のない我々にはちょうど良かったかもしれません。大きなカメの像のうえで写真を撮ったり、郵便局でガラパゴスゾウカメのスタンプを押させてもらったりしながらダラダラと散歩をしていると、砂浜にはアシカが集まっているのが見えてきました。これで最後だと思い、近寄って写真を撮ろうとすると、ここのアシカは他の島のアシカよりも警戒心が強いようで、海の方へ逃げて行ってしまいます。これが普通の反応なのかもしれませんが、ちょっと寂しい気持ちになりました。  時間になったので、ボートでGE2へ戻るとすぐにランチでした。フロントには既に我々5日間組のバックが運ばれてきています。食後は部屋にいても何なので、プールデッキに出て外の風にあたっていましたが、時間になってもなかなかボートが出発する気配がありません。フロントで確認してみると、どうやら飛行機が遅れているようです。サエタ航空はサービスは良いのですが、遅れがちなのが玉に瑕ですね。結局ボートが出たのは16時半でした。  飛び立つ飛行機の窓からガラパゴス諸島を眺めていた我々は、お金を貯めてまた来たいなと思っていました。その後はちょっと遅めのシエスタタイムです。  グアヤキルに着いた時にはもう18時で、市内観光の予定はすべてパーです。迎えに来てくれた現地旅行社のトリイさんの車で行きに泊まったのと同じコンチネンタルホテルへ移動します。トリイさんには行くときにゾウガメの絵が入っているエクアドルのお札と切手を集めておいてもらうようにお願いしていたのですが、現金がほとんど無い状態でどうしようかと思っていたら、代金は後で東京の旅行社に渡してくれてもいいし、現金が無いなら貸してくれるというのです。渡りに船というか地獄に仏というか、遠い異国の地で人の情に触れた気がしました。  ホテルに着くとすぐに食事に行くとのことなので、荷物を部屋に置いてすぐに車に戻りました。今日のディナーはカニです。行きにも聞かされていたのですが、我々は大のカニ好きなので、とても楽しみにしていました。市内観光ができなかったので、店へ向かう途中にある丘の上の展望台のようなところへ寄りました。ここからはグアヤキルの町が一望でき、下からはよく分からなかったのですが、結構大きな町だなと思いました。  連れてきてもらった店は観光客向けではなく現地の人がいくような店で、店の屋根には動きはしませんが大きな作り物のカニがのっています。中に入りテーブルにつくと、そこには既に透明なまな板のようなボードと木槌、それに前掛けが人数分用意されています。トリイさんは店員に何やらスペイン語で色々と頼み、我々には「今日は食べたいだけ食べて飲んで下さい。」とうれしいことを言ってくれます。すぐに茹でたカニが6パイ出てきました。このカニはマングローブガニといって、海水と淡水が入り交じっている地域に生えるマングローブの林に生息しているちょっと変わったカニで、大きさは毛ガニくらいですが、ハサミが大きいのが特長です。まずは、トリイさんから解体方法や足の中の肉の食べ方等を教えてもらいます。トリイさんに言わせると我々はけっこう器用で覚えが早いとのことでした。ハサミや足は木槌で叩いてから中の肉を取り出すのですが、このときにけっこう汁や破片が飛び散ったりします。来るときにトリイさんができるだけ汚いカッコをしてきて下さいねと言っていた意味が分かったような気がします。しかし、カニ好きの我々にとってはこんなことは何でもないことで、昨日までの上品はディナーとはうって変わった豪快な食事に満足していました。  最初のカニは薬草か香草のスープで茹でたような感じでとてもおいしかったのですが、次にトリイさんが頼んでくれたやつもニンニクがたっぷり入ったこってり味で病みつきです。その後は交互に注文し、けっきょく1人6パイくらい食べたでしょうか。途中、トリイさんは店員を呼んでまた何やら言っています。するとその店員はおもむろにギターを持ってきて、我々のテーブルのすぐ横で歌い始めました。いわゆる「流し」ですね。2〜3曲聞いた後トリイさんはチップを上げていましたが、日本円で20円くらいのもんだそうです。  最後はカニ飯でしめくくりました。トリイさんに今日の食事代はどれくらいなんですかと聞くと、「ここは現地人向けの店としてはけっこういい店だけど、ビールなどの飲み物を入れても3人で1500円くらいだよ」とのこと。おいしさにもビックリしましたが、値段の安さにもまたビックリしてしまいました。しかし、こちらの物価からすればそんなもんかも知れません。トリイさんの家でも女中さんを雇っているとのことですが、その月給がたったの3000円だそうです。このカニも市場で買えば最低単位が24パイで、その値段も200円から300円くらいだそうです。開発途上国はいいよとトリイさんは言っていましたが、私も真剣にエクアドルに移住しようかと考えてしまいました。でも治安は悪いですけどね。  とりとめもなく、今回の旅を思い起こして書き連ねてきましたが、ガラパゴス旅行記としてはこのへんで締めくくらせていただくことにします。私達の新婚旅行は、この後オーランドのウォルト・ディズニー・ワールドへと続くのですが、それはまた別の形でご紹介しようと思います。